ルソー『人間不平等起源論』2 

○進化論
ルソーの『人間不平等起源論』には、類人猿は未開人に、未開人が現代人に進化してきたという進化論めいたものが見てとれる

ダーウィンの進化論は1859年だが、それに先立つ百年以上前(1755年)に、進化論的な発想を持っていたことが驚き

当時のジュネーブ共和国から、離れた地域
未開人(ホッテントット等)、類人猿(オランウータン等)の見聞録
それらの資料をつかって「歴史」を想像している

空間の広がりを、歴史的広がりへと垂直に転倒させることで、ルソーの自然状態論は作られている

古代ギリシャより「今」の方が進歩している
ということ、歴史の進歩という概念は、当時でももちろんあっただろう
『人間不平等起源論』は「歴史における進歩がある」というアイディアが、生物における進化がある、という観念へと接続しそうで、接続しない、ギリギリの境にある

○聖書、プラトン、ルソー

聖書におけるアダムと、自分のいう自然状態は異なるのだということは、ルソー自身『人間不平等起源論』で繰り返し語っている

また、戸部松美によれば、ルソーの「自然状態」は、キリスト教的であることを退け、プラトンのイデア論に近いのだという

実際、古代ギリシャの神に言及しているところもあり、プラトンの『国家』との影響関係も大きそう

しかし、総体としては、聖書における「エデンの園」と「堕罪」という神話が、ルソーの「自然状態」論の背景を支え、それがあるゆえに、こういうものが書かれ、こういうものが読まれたのじゃないのという気がする(論証には手続きが必要)

『人間不平等起源論』=生物学+文化人類学+キリスト教+プラトン

類人猿→未開人→現代人

という発展の図式は、『人間不平等起源論』の中に見られる

これは、アダム→ギリシャ人→当時のフランス人
という図式と、不整合を起こしてもいるだろう

どうやって、当時の人々は、不整合に目を瞑り、自己を納得させていたのか不思議でもある

○「自然にかえれ」と「動物」

ルソーは哲学的な知性を批判し、「自然の状態」を肯定する

ルソーの哲学批判、理性批判および、ルソーの社会制度における教育論と自由論をどう評価するか

ルソーは親動物的、といえるか

ルソーの動物観は、どのていど西洋において一般的なものであったのか

ルソーはある種、ナチュラリストのはしり、みたい
「自然の状態」にある人間を特徴づけるのは、「憐憫」と「自己愛」である

ルソーにおける自然は肯定的なイメージである

たとえば、漱石や埴谷の小説における「自然」という語と、ルソーの「自然」の関連はどうか
ゾラの自然主義との関係はどうか

キリスト教の「自然状態」は「神の恩寵」を欠いたという内容を持ち、悪い意味である

Aホッブズ、キリスト教神学の自然状態はネガティブな意味

アダム
→堕罪
→自然状態(=ホッブズの自然状態、戦争状態)

Bルソーにおける自然状態は、ポジティブなものからネガティブなものへと段階的に移行する

エデンの園的なもの=自然状態1=理想的なもの
→堕罪
→自然状態2(=戦争状態)

ギリシャの「自然」は生成発展するものであり、肯定的なものである
ギリシャの「自然」には、ネガティヴな意味はない

ルソーが、ギリシャ的な概念を導入しつつ、「自然」という言葉を肯定的なものへと変えたのだろうか
ルソーの論が当時の社会に受け入れられる下地があったのか

○なぜ、「不平等の起源」を語る文脈で、「言語の起源」もまた、同時に語られねばならないのか?

○恋愛
自然状態において、セックスはあったが恋愛はなかった
「恋愛」とは何か
ルソーにおいて「恋愛」が必ずしもポジティブなものとして語られていないことに注意する

○「悟り」と「革命」
「自由」で「平等」で「言語の存在しない」のが「自然状態」
すべての人が、そのような状態で生きている世界への理想

たとえば、仏教に対する通俗的な批判として、「坊主が増えれば国が傾く」と言われる
正しい
「悟り」というものは個人的なものに過ぎない

しかし、ルソーにおける「自然状態」とは、すべての人が解脱している世界に見える
すべての人の「悟り」というのは、「革命」のビジョンとして面白い
世界の全人民が、一度に、ニルヴァーナに達した世界が、ひょっとしてありうるのじゃないかと感じさせるところ
人類補完計画
そこに、『人間不平等起源論』の一番の面白さがある
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