青山七恵『ひとり日和』 

ひとり日和 ひとり日和
青山 七恵 (2007/02/16)
河出書房新社

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2006年度下半期芥川賞受賞作
本書を「つまらない」とする一般レビュアーの意見はかなり多いよう
私が一番「?」と思ったことは、この作品は、エドワード・ケアリー『望楼館追想』と似ていること

・主人公に盗癖がある
・誠実な「語り」がなされていず、ひねくれている
・主人公がなぜ病んでいるのか示されず、ちょっとミステリー風味
・主人公の盗癖は、「思い出」や「不易なもの」という問題と関わっている
・他者の優しさに触れ、救済を受け成長するというオチ

これらの物語の骨格の点で、『望楼館追想』とかぶっている
選考委員たちは誰も指摘しなかったのか
ケアリーを読んでいたら、縮小再生産とみなされえたのじゃないか

母子家庭、地方出身、高卒の、二十歳ほどの女性知寿が、東京調布にある駅沿いの、小さな一軒屋、七十歳ほどの高齢者である吟子の家に住み込み、同居するという設定

主人公が大学への進学を断固拒否するところや、恋愛に対してシニカルなところなど共感できる
おばあちゃんを、動物のように描写する、突き放した視線
五十歳ほども年の差のある知寿と吟子の間での、屈折した心理的な対立関係
人と人とがすれ違い、流れ行く駅の風景を象徴的に登場させるところ
などなど、趣き深い

芥川賞候補には、本作のほかに柴崎友香の「その街の今は」も入っていたようだが、ぼくは「ひとり日和」の方が好きだな

でも、ところどころに添削したくなるようなまずい文章がある
高齢者を主要な人物として登場させること
母の赴任先が中国であること等で、他者性を出そうとする意図も良いのだが、お婆ちゃんのセリフに、いまいちリアリティが薄いところもある
「世界に外も中もないのよ。この世はひとつしかないでしょ」
なんて、セカイ系みたいなこと、老婆が言うか……?
言わねーだろ……

石原慎太郎と村上龍が絶賛したという
ヒネた若い女性が、老婆の愛により更正する
といった成長物語に、龍と慎太郎はハアハアしたのだろう

一方で、主人公が嫌い、という意見は多いよう
「分かる分かる」という人と、こんな作家の作品、二度と読まんと放り投げる人とでわかれそう

暗い小説ではある
希望がない
文学にはやはり、「革命」が必要であろう
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