諏訪哲史『アサッテの人』 

アサッテの人 アサッテの人
諏訪 哲史 (2007/07/21)
講談社
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2007年度上半期芥川賞受賞作
今回、選考委員から河野多恵子が抜け、小川洋子と川上弘美が加わった
若い世代にどんどんかわっていくのだね
「アサッテの人」は二人とも推したよう
なんとなく、分かる
前回の芥川賞と逆に、今度は慎太郎と龍が受賞作を批判
それもなんとなく、分かる

アマゾンレビュアーの評価は良い

一方、「2チャンネル」でのけなされっぷりがすごい
【第137回芥川賞】諏訪哲史【アサッテの人】


ここまでけなすのかとびっくりする
「語り手」と、「叔父」の二人がメインの登場人物なのだけれど
この「叔父」の異様な行動の原因は、「チック」の悪化したものである「トゥレット障害」という神経精神疾患なのじゃないかと噂になっている
そのことを伏せて物語を書くのは、差別を助長するものじゃないかとか
とにかくひどい罵倒ぶり
出版社も選考委員も、そんなことも知らないのか、ボケ、カス
筒井の「てんかん問題」の再来だ
とかなんとか、騒いでいる

・筒井のケースと諏訪のケースを同一視できるものなのか
・2ちゃんねるが、こんなふうに政治的正義を背負うのはどうなのか
他に批評のやり方を知らないのか
やや疑問
書き込んでいるのは数人だろうけれども
ネガティブな批判力を持つ人が結集しているのか

小谷野敦によればやはり、「筒井康隆の亜流の亜流みたいなもの」とのこと
筒井に似たような作品があると言っているけれど、何ていう作品なのかな
猫を償うに猫をもってせよ - 芥川賞選評

この作品は、言語学的な知識が多数盛り込まれている
赤い郵便ポストを見ていて吃音がなおった、というエピソードは東浩紀の『存在論的郵便的』や、デリダの仕事なんか、念頭にありそうだし
「エルレ」という亜麻布を量る単位も出てくるが、この典拠先の書物は『資本論』の可能性もあるだろう
叔父のやったという「定律俳句における字余り・字足らずの研究」なんてのもちょっと気を引く
安部公房との類縁性のありそうな箇所もある
インテリ向けにネタを散りばめている

たとえば石川淳の「鷹」と比較しても面白そう
「鷹」の場合、「明日語」というものが重要な概念として登場する
「鷹」の「明日語」は、ヘーゲルーマルクス主義的な、ロゴスの自己展開とでもいったものが暗喩されている
「明日語」を使う「国際的たばこ密造団」の人々は、世界みんなの「ピース」のために活動するのにもかかわらず、国家による取り締まりの対象とされてしまう、というお話

一方、諏訪の「アサッテの人」は、「明日」よりもっと未来に、「アサッテ」の方向にいっちゃっている
「明後日」ではなく、「アサッテ」
気の抜けた、どこへゆくとも知れない、茫洋として、呆けている、ポップなイメージ
「アサッテ」
組織的なものはなく、非常に孤独
「チューリップ男」なんてものも出てくるが、この人も「アサッテ」仲間みたい
エレベーターの中で一人きりになる隙を見計らって、逆立ちしたり、チンコを出してみたりする
こういう人、割といそうだよな……
叔父はデンパ系の人と「アサッテ」を共有している
ヘーゲル―マルクス的な「大きな物語」に支えられた言語論よりも、構造主義的言語の側へ、私的イロニーの側へ、「言葉」がシフトしている結果である
と言えるのか、言えないのか
よく知らないけど

「ポンパ」という意味不明の言葉が繰り返し話題になる
「ポンパ」とは「耳に付きやすいくせに、それ自体意味を持たぬ言葉」である
「それはブラックホールのように人間を吸い寄せ、暗い穴の中へ呑み込んでゆく」
もとは祖父の発した言葉であった
祖父の「ポンパ」という口癖は叔父にうつった
祖父のものは、「純然たる性癖」であったが、叔父のものは「病的な衝動」だという
これらの記述にも注意すべきだろう
「ポンパ」とは「赤」であっても構わないかもしれない
ある世代において、「ポンパ」は「日の丸」であったかもしれないし、「革命」であったかもしれない
最初、それは意味のない言葉であった
しかし、人々は、それらの言葉に病的にからめとられていくのかもしれない

今の時代、「ポンパ」は「ポンパ」なのだろう
「ぬるぽ」とほぼ似たようなものだろう

音と、意味がどう接続されているのか
意味のない音は、言語であるといえるのか
「私」のオリジナリティというのは、言語との関係のなかでどう保証されうるのか
「革命」なき時代に、「自由意志」はいかにしたら可能か
「アサッテ」の象徴するものとはなにか
そんなことを考えさせられる
いまさらポストモダン小説かい、といわれたら、それまでかもしれないけれども

語り手による地の文は、定型的な日本語が折り目正しく使われていて安定感がある
ところどころに叔父による特異な言動や、狂的表現がはさまれるが、総体としてのバランスはよい
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