佐々木俊尚『『ネットvs.リアルの衝突』 

ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか
佐々木 俊尚 (2006/12)
文藝春秋
この商品の詳細を見る


全体の5分の3近くはwinny事件のルポルタージュにあてられている。
後半はインターネット開発の歴史を振り返っている。

開発者金子勇氏におけるwinny開発の動機は、「著作権を侵害する行為を蔓延させて、著作権を変えるのが目的」であったのだろうか。
2ちゃんねるで、そのような発言を金子氏は繰り返していたようだ。
しかし、その発想は公的な意見とはせず、「暇つぶし」のためにwinnyを作ったのだということのみ、法廷で証言している。

著者の佐々木俊尚氏は、winny開発者を「革命家」だと考えたがっている節がある。


ネットという革命勢力と、リアルの世界、つまり保守勢力の戦い。
IT業界にそのような対決の構図を見出し、前者を応援するのが著者の立場のようだ。
しかし、「winny開発」がもしも「革命」であるとするならば、その革命はどのような方向へ、人々を導こうとしたものなのだろうか。

著者は慶応大教授の村井純氏における、「自律・分散・協調」という概念を引いてくる。
これは、インターネットの理想を象徴しているのだという。

システムの中にシステムを統治する管理者は存在せず、システムは自律して分散しているサブシステムによって構成され、彼らの協調作業によってシステムの機能は遂行される――。


「自律・分散・協調」。
これを体現したものがwinnyであり、P2Pというシステムであると一つには言える。
しかし、winny的な、P2Pのシステムは、今後も再び登場し、広まっていく動きはあるのだろうか?
本書の後半ではインターネット構築の歴史を振り返る。
それは、科学者や技術者が抱いたインターネットに対する理想が、国家や大企業に囲い込まれていったことを確認している内容だといってもよい。
ネット(革命)VSリアル(保守)の戦いのうち、後者の強大さが否応なく目につく。
ITという「革命」の側に希望を見出しつつ、結局、それは国家や大企業の利益の中へとおさえこまれてしまうのではないか。
カウンターカルチャーとしてのITという考え方に対し、いくらか悲嘆的な雰囲気がある。

また、著作権の善し悪しが、今一つ踏み込んだ形では論じられていないことも残念である。
著作権法を犯し、著作権という思想の書き換えを行うことで、どんな社会が訪れるのか。
それは万人の幸福に奉仕するものであるのか。
「ネットVSリアル」が「衝突」し、もしも前者が後者を侵食しえたとしたら、そのときどんな理想が達成されうるのか。
本書では、そこまでの答えを用意してくれてはいない。
あるいは、それを考えることは、読者であるぼくらにゆだねられているのかもしれない。
佐々木氏の引用しているジョン・ベリー・バーロウ「サイバースペース独立宣言」の言葉をここに載せておこう。
ここには、持続し、拡大してゆくべき思想のヒントが提出されている。

 中国やドイツ、フランス、ロシア、シンガポール、イタリア、アメリカで、お前たちはサイバースペースの最前線に番兵を立て、自由というウィルスを侵入させないようにと食い止めている。少しの間は侵入を食い止めることはできるかもしれないが、世界は間もなくビットのメディアに覆われていくことになる。そうなればおまえたちの努力はすべて無駄になる。
 お前たちの情報産業はしだいに陳腐になってきており、法律によって延命を図ろうとしている。アメリカやあちこちの国で作られているそれらの法律は、自分たちの主張を世界全体に認めさせるためのものだ。それらの法律では、思想を、銑鉄と同じ程度の価値しかない工業製品のひとつだと主張している。われわれの世界では、人間の精神が生み出したものであれば何であっても、コストをかけずに再生産し、分配することができる。思想を世界に伝えるのに、もはやおまえたちの工場は要らないのだ。


にほんブログ村 本ブログへ←ブログランキング参加中。クリックできまい☆
スポンサーサイト
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

松平耕一

Author:松平耕一
○twitter登録名:matudaira
○ツイッターまとめ:http://twilog.org/matudaira
○Facebook登録名:松平耕一

☆文芸空間社企画
◎批評放送
・批評放送は松平のプロデュースする動画配信企画です。ツイキャス http://twitcasting.tv/matudaira 、youtubeなどで配信されます
批評放送@USTREAM

○松平耕一・文芸空間社・批評放送へのカンパ振り込み先は
・三菱東京UFJ銀行の吉祥寺支店普通口座1896022 マツダイラ コウイチ 宛になります

管理者ページ

FC2カウンター
ツイッター@matudaira
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
全記事(数)表示
全タイトルを表示
カテゴリー


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。