大西巨人『神聖喜劇〈第1巻〉』に関するメモ 

神聖喜劇〈第1巻〉 (光文社文庫) 神聖喜劇〈第1巻〉 (光文社文庫)
大西 巨人 (2002/07)
光文社

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『神聖喜劇〈第1巻〉』大西 巨人

光文社文庫版 Amazon.co.jp ランキング: 本で99,263位

ストーリー

第一部 絶海の章
序曲 到着
一九四二年一月十日
対馬到着

第一 大前田文七
入隊八日目 一月十八日
主人公藤堂が、「共産主義者は、一般に軍務兵役を拒否しなかったであろう」
「世界は真剣に生きるに値しない」
と考えているむね、紹介される

第二 風
入隊九日目 一月十九日
藤堂、冬木、谷村、佐野、市丸ら、朝の呼集時間に遅刻
仁多軍曹に「知りません」を禁止され、「忘れました」を強要される
藤堂・冬木ら軍隊上部にたてつく

第三 夜
入浴の帰り、藤堂と冬木、上官に呼び止められる
十九時三十分過ぎ、大前田が、藤堂に対し話の聞き方が悪いとして恫喝する
大前田「整頓」の「拉縄」を引く
「賤ガ岳の七本槍」の読み方をめぐり、大前田がごねる
(藤堂、二、三年前の回想をする
「特定の治安法規」にたいする違反容疑から、官憲による尋問を受けた件についてである)

大前田、暖炉を燃やすよう指導する
大前田、大学出の兵隊に挙手を求める

(藤堂による回想がなされる
高校時代、先輩である西条靫負とともに、学校教練について学校側といざこざを起こした
先生との討論が想起され、藤堂の父、藤堂国継の人となりについて語られる)
藤堂、大学を中途退学した旨、大前田に伝える

第二部 混沌の章
第一 冬
「堀江隊長」が紹介される
一月十九日から十数日立つ、二月三日朝食後
郵便物に関する防諜上の注意について訓示が始まる
このなかに、軍隊の食事に不満を持つものがいる、と神山が注意をする
犯人は石橋であった
「大根のおかず」ばかり食べることへの不平を、ハガキでもらす
大根は軍事機密だというむね、話題になる
(藤堂回想、一月二十五日(日曜)、藤堂、冬木に、「知りません」禁止「忘れました」強要は、「法は不知を許さず」という法制上の規則と関わりがあるのだろうと、八紘山頂上で話す)
神山が「自首の重大性」について冬木に因縁をつけ、殴る

第二 責任阻却の論理
堀江隊長登場
事態の説明を求める
橋本が大根の根は軍事機密だと発言する
(藤堂が、軍における「忘れました」強要に関して、「責任」と「無責任」に関する考察を行う)
神山が、橋本・冬木の身の上について、堀江に伝達(か?)
藤堂・曾根田・室町、「大根の根は軍事機密だ」と聞いたむね証言
(堀江隊長の「弛張(チカン)」という読み方をめぐる藤堂の考察がなされる)

第三 現身の虐殺者
二月三日
三八式野砲の教育
(藤堂、鉢田が一月二十三日、はがきに自己の姓名を「何某」と記した事件について回想)
大前田が、戦地で「匪賊」を生きたまま丸焼きにしたむね、告白する
(「隠坊」に関して、藤堂の回想がなされる)
大前田が「敵を散散殺したる(懲らしたる、が正しい)勇士はここに眠れるか」という『戦友』の歌詞に言及し、胸を手に当てて考えよ、と指示する
『戦友』は禁じられた歌ではないかと曾根田は指摘する
内地で日本人が人殺しを行うのと、戦地で人殺しを行うのは違う、と大前田が説教する

第四 「隼人の名に負ふ夜声」
橋本が砲身を水平にする操作に悩む
鉢田、「川筋」では人殺しも炭鉱災害による人死にも、珍しくないむね主張する
大前田による差別的発言をなす
鉢田が、大前田による、「人を焼き殺す」という事例の珍しさについて指摘する
橋本、死人は焼いたことがあるが、生きている人間を焼いたことはない、と告白する

************************
◎藤堂太郎の個性の特異性をどう評価するか
シニシズムの点では?
軍上層部との戦い方は?
記憶力のあり方は?
軍隊は「規則」で兵隊を拘束する
ここには規律/訓練の問題がある
藤堂は「規則」に対し、「規則」で対抗する
『神聖喜劇』では軍隊諸法規の条文が、正確に、長文で、(ある種グダグダな)引用がなされる
藤堂の思惟の流れ自体であるとみなすこともできるだろうが、これをどう評価するか
自己をからっぽにし、敵方の法規の条文を、自己の内部にコピーアンドペーストする
相手の武器を使い、相手の鏡になることで、軍上部の攻撃を反射し、自爆させていく
藤堂のこのようなやり方は、ポストモダン的な個性だといえるだろうか
また、藤堂のコピーアンドペーストは、軍隊諸法規の条文のみならず、東西古今の文学・思想に対する態度としてもおこっている
藤堂は自己を喪失し、カノンの内容を脳内に敷きうつしている、ともいえるだろうか
あるいは、学問の基礎とはそういうものかもしれない
確かに、軍隊諸法規条文を自己の中へとコピペすることは、軍隊上部との戦いにおいて有効である
しかし、これを敷衍させて、東西古今の文学・思想を自己の中にコピペすることは、何の役に立つのか
藤堂は優秀なのだろうけれども、いたずらに衒学的とも見える
「近代的な主体」のあり方としては、先行する文献をよく噛み砕き、自己のものとすることが重視されるかもしれない
引用文の多用は、素材だけがゴロリと投げ出されているかのうようでもある
このような文章の書き方は、どのように評価できるのか
また、実際には、軍人となるための教育期間中にこのようなことを長々と考えている兵隊などいないだろう
文献・資料が手に入らず、勉強する時間もないはずだ
軍隊が優雅な場にも見えてしまう

◎闘争の方針
憲法九条は、護憲すべきなのか、改憲すべきなのか
マルクス主義者は、自衛隊を軍隊となし、徴兵忌避をせず、内部での闘争を行うべきなのか

◎橋本の「告白」と、島崎藤村『破戒』の「告白」との比較

◎『神聖喜劇』第1巻は、全5巻中のなかでも、もっとも緊張感に溢れる
2巻3巻と、ストーリーが進むにしたがって、藤堂の優位が確立されていく
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