07th Expansion『ひぐらしのなく頃に』 

ひぐらしのなく頃に祭(通常版)ひぐらしのなく頃に祭(通常版)
(2007/02/22)
PlayStation2

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07th Expansion『ひぐらしのなく頃に』

『ひぐらしのなく頃に』の漫画版・アニメ版をざっと鑑賞
PC版をやってないので何ともいえないところだが、軽くメモをとっておく

○同人によるゲーム制作
「ひぐらし」は同人ゲーム
当初はコミックマーケット、インターネット上の公式サイトのみで公開、販売された
Web掲示板を中心に人気が上昇し、ドラマCD、漫画、アニメ、一般のゲーム機への移植、単行本化もなされる

会社によるものでない、同人によりつくられたPCソフトがもととなっているということで、商売のやり方、流行の導き方の点で特殊なケースである
Webの特性が生かされて、大きなムーブメントをつくりだした
「小説として出さなかったからこそ儲かった」という、イロニカルな逆説がありそうだ
普通の「小説」と、どのように異なり、どのように同一であるのか

○サウンドノベル
『弟切草』『かまいたちの夜』等のコンピュータゲームが開拓したジャンルであるサウンドノベル
読者の作業は、「テキストを読む」ことであるが、テキストには画像と音楽が付される
「ひぐらし」はプレイする側の自由意志は介在せず、分岐点がない
核となるのは「テキストを読む」ことであり、この点で実質的に「小説」だといえるのではないか
しかし、「小説」とは異なる売り出し方が、大きな成功を呼ぶ上で、明暗を分けていそうである

○「ゲーム世界」というからくりの使い方
「ひぐらし」は繰り返しの物語

1登場人物
2ある年の、ある日に焦点がある
3場所

同一時間、同一空間である、一つの舞台を別々のストーリーで何度も描く
パラレルワールドを幾層にも連ね、物語世界に深みをもたせる
しかし、完全なパラレルワールドではなく、登場人物に記憶が残ることで、徐々に話が解決されていく
残虐なバッドエンドから始まり、少しずつ問題が解消されていくよう
ストーリーの複数性ということ、パラレルワールドが内に含まれるということでは、『かまいたちの夜』のようなサウンドノベル、『ときめきメモリアル』のようなギャルゲーにも同じ要素があった
それらのゲームは、多くの可能世界をゲーム内に持ち、同じ時間、同じ場所の設定であるが、何度も別々のストーリーをプレイできるようになっている
「ひぐらし」は、ゲーム的な可能世界を縦に連ねて、一つの物語へとまとめている

○「挑発」としての「謎」の作り方
たとえば、三島、太宰、漱石における「謎」と、ひぐらしにおける「謎」の差異はどのようなものか
データベースの形式としての、差異について
私小説的なリアリズムとゲーム的なリアリズムの差異はどうか

・ライトノベル
「ひぐらし」の基本は、ライトノベル+ミステリ+ホラー+SF
ラノベ特有のリアリズムの在り方をどう評価するか
ラノベにおけるリアリズムと、純文学のリアリズムの差異をどう評価するか

○殺人
仲の良い友達を殺してしまうというストーリーが起点
ディスコミュニケーションが傷害事件を引き起こす
何でもないような「誤解」が、心のすれ違いとなり、虐殺をもたらす
ニッコリ笑いながら、悪意を裏に持つ
そういったような、恐ろしさを他者に感じる
ある人物内、ある社会内に宿る、やさしさと残酷さの「二面性」がポイントである
「負」の対象が、どこに集中化されるのかということ

他者への過度の期待という問題もありそうだ
共依存やダブルバインド等
精神病的要素が文学的に表現されていないだろうか

疑心暗鬼の心情描写に特徴がある

・精神病
恐怖症、脅迫障害、PTSD等の症状を思わせる表現があちこちに
強姦やDV等が課題として挙げられている

・「死」の扱い方をどう評価するか

○ミステリとして
・クリスティ『オリエント急行殺人事件』『そして誰もいなくなった』

○エンタメとして
荒唐無稽でひどいところがある
ひどさも、ヒットの一因か

○殺人の理由
殺人を引き起こす理由

1寄生虫による特殊な風土病が、精神病的な症状を招くという、SF的設定
小野不由美『屍鬼』→ウィルスにより暴力的な症状が出るということ、その結果、村をまることつぶしてしまうストーリー等で類似している

2村落共同体による圧力
横溝正史風

3国家によるもの

周りの友達とのディスコミュニケーションを解消する
村落共同体内部でのディスコミュニケーションを解消する
国家側に立つ人物とのディスコミュニケーションを解消する
という3段階を踏んでいくことで、殺人を防ぐというお話

・村民運動
この人、運動に興味があるようで村民運動的な描写がある
でも実際の運動体験はなさそう
リアリティがない

・コミュニケーションの重要性が全編のテーマであるみたい
ディスコミュによる関係性の破綻から始まり、徐々に話し合う相手のレベルがあがっていく
しかし、全体としてコミュニケーションが成立していくごとにつまらなくなる
むしろ、作者は、他人とあまりコミュニケーションをしたことがないのじゃないかと疑われる

○オタクにとって「萌え」とは何か
・言語的問題
キャラクターのしゃべり方がギャルゲー的
「ですのよ」「ですわ」「なのです」「みー」「にぱー」
そんな風にしゃべる女、いないだろう
アホか
しかし、そういう言い回しが一定数の指示を得るのはどうしてなのか
また、一定数の反発を得るのはどうしてなのか

・絵
「萌え絵」をどう評価するか
実際の異性との差異をどう評価するか
ロリペド趣味をどう評価するか

○「残虐」と「萌え」
『ひぐらし』『新世紀エヴァンゲリオン』『ぼくらの』『撲殺天使ドクロちゃん』等
「残虐」と「萌え」をマッチさせる手法が現代的な流行としてある
「萌え」の対象が現実には存在しないものであること
そのことが、逆説的に、「死」や「残虐性」を、作品のオプションとして、呼び寄せているのではないか
・「死の欲動」の問題

○中2病性
学生生活を何度も何度も、永遠に楽しみたいという希望が背景にありそうである
「中学2年生のある夏の思い出」
そのような短い期間に粘着し、執拗に描くということ
作者にとって、その「期間」こそが「生きられた時間」だったのではないか
しかし、その「期間」を描いている「現在」、執筆のみに費やされる「現在」は「死んでいる時間」ではないのか
そして、学生生活を緻密に描くという作業は、ラノベの定番である

・『死霊』『神聖喜劇』にも、「ある短い青春の一時期」を綿密に描くという特徴がある
ラノベのものとの差異はどこにあるのか

○変なところでこだわりがある
・選挙にちゃんと行こう
・退職金をえるのは大変だ。きちんと働こう
等のお説教がある

○世界文芸史の中で、どのように位置づけられるのか
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[ 2007/10/05 08:09 ] [ 編集 ]
>学生生活を何度も何度も、永遠に楽しみたいという希望が背景にありそうである

東さんの好きなアニメが「うる星やつら2--ビューティフルドリーマー」で、そのアニメのテーマがまさにそれだったという落ちですね。
[ 2007/10/05 22:57 ] 木棚 [ 編集 ]
失礼しました。ひぐらしは鑑賞中だったのですね。

実際ひぐらしを見終えて、
繰り返しの世界(フリー小説ひとかた)
ダム問題(入試小論文入門)、屍鬼、刑事モノなど
ほとんどの元となる作品などが頭に浮かんでいます

しかし事件背景や政治、文学、昔の生活、田舎の自然の尊さ
などに関心の薄い人達や若い世代を引き込んだのは
功績だと思います。PCでは主人公の心情(地の文)では
これらの尊さや重要さが強く見受けられました。

萌えに消化不良を抱かれているようですが、幼児的な容姿の
登場キャラクターはディズニーも用いている手法で
万人に受け入れられやすい性質をもっているようです。
(頭が大きく、目と鼻が近いなど)
大人は保護欲を、子供は親近感を覚える。

幼児的なキャラクターに性的欲求をもってくると
気持ち悪かったり事件性が現れてくるのですが、人が非常に
多く集まれば事件を起こすような人が混じるのも必然と
高をくくっています。

ディズニーは動物を用いたことでその点を回避したとも。

ひぐらしは私も一度、考察したのでURL貼っておきますね。

ネットでの知識の化学反応が楽しいこの頃です。
失礼しました。また機会があれば(´ω`*)ノシ
[ 2008/06/22 19:57 ] yuki。 [ 編集 ]
丁寧な感想をいただきありがとうございました

ぼくはぼくで、萌えを愛しております
[ 2008/07/15 11:45 ] 松平 [ 編集 ]
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