すが秀実「吉本隆明と黒田寛一――六〇年安保と知識人界」『早稲田文学0』(2007) 

○黒田を評価しているよう
みんな、運動しようよ、ということなのでしょうかね
左翼用語がわからん
「革命」って、なんなんだろ
「革命」の代理=表象となる「文学」なんてありうるのかな
ぼくらは、言葉の残骸のなかを生きていくしかないのか
「固有性」は必要か
我慢できるひとは我慢できる
リスカはなぜなされるのか

○内容
・黒田と吉本は1960年に論争を行った
この論争ののち、黒田は革マル派の偶像的・秘境的指導者として、吉本は丸山真男に代わるジャーナリスティックな知識人として、道が分かたれる

・「先駆的にはロシア・フォルマリスムが教えており、今や文化研究の常識となっているように、権威的・制度的文化ヘゲモニーの転換は、下位のサブカルチャーにおけるヘゲモニー抗争に規定されている。その意味で、五〇年代後半に登場した「反スターリン主義的」な政治的・思想的諸潮流は、広義にも狭義にもサブカルであったし、その抗争は、後の文化ヘゲモニーの帰趨を決定したのである」

・「六八年」を通過したのちに残ったものは、またしても黒田と吉本である
「「知識人の運動とはなにか」という問いが失効しているかに見える現在において、しかし、「知識人」の亡霊はぬぐいがたく徘徊している」

・六〇年安保は「ドレフュス革命」でもあり、「「新左翼」という新しいタイプの「知識人」を誕生させた」

・「学生インテリゲンツィアに支持基盤を置く、「民主主義に対する一種の軽蔑を前提とした」独立的な極左知識人の潮流」……黒田と吉本……二人の論争の重要な論点が、知識人論である

吉本……急進的インテリゲンチャ運動の肯定
黒田は労働者フェティシズム、党フェティシズムにとらわれていると批判

・八〇年代以降の大衆消費社会は労働者フェティシズムを払拭し、黒田に対する吉本の優位を印象づけた
「「主体」のモデルは労働過程において規律・訓練される「労働者」ではなく、流通過程において資本に自由かつ対等に振るまう(そして、管理される)「消費者」であると見なされるようになる」

・今日のネオリベラリズムの濫觴……「八〇年代における国鉄=国労解体をメルクマールとするところの中曽根「民活」」

・黒田は、フェティシズム的な「労働者の組織化」を持続
吉本はポストモダン的なネオリベラリズムへと傾斜していくことを余儀なくされる

・「3 六〇年「六・四ゼネスト」の謎」
吉本と黒田の分岐点

・吉本は、労働運動に先行して、学生たちの「急進インテリゲンチャ運動」が必要だとする

・しかし、黒田には、六・四ストに対する知識人の応接ぶりこそが、「急進的インテリゲンチャ」の自己破産を証明する出来事と見えた

・鶴見俊輔による、東海道線の列車転覆計画などである……これは、黒田にとって「プチ・ブル的焦燥感にかられた極左方針」である

・この件について、鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊栄二『戦争が遺したもの』で、鶴見は偽証をしている?

・五〇年代共産党の「極左冒険主義」

「「極左冒険主義」は、吉本やブント=全学連にとって、ある種の難問であった。ブントは日本共産党の平和革命路線に対して暴力革命を掲げて登場したと言われる。しかし、ブント=全学連の中心は、五〇年代に極左冒険主義を採用していた所感派(主流派)に対立する国際派の系譜を継いでいた」
「五六年のスターリン批判以後、既成共産党の権威に疑いを持った学生党員たちは、宮本=共産党の平和革命路線を闘争の放棄と見なし、独自の急進的な運動を展開しはじめた」「そこで導入されたのが、学生インテリゲンツィアの急進性が労働者階級を牽引しうるとして、戦後学生運動を戦闘的に展開することを保証していた武井理論だった」

・ブントには、「暴力革命を掲げて、なおかつ「極左冒険主義」を斥けること」のディレンマがともなっていた

・「「擬制の終焉」において、吉本は、安保闘争を戦後民主主義の成熟と見なす丸山真男ら市民主義者の見解に反対して、そこでの「市民・庶民の行動性」は、「はじめて自己の疎外感を流出させる機会をつかんだ」ことの表現だと言う」

・鶴見による新幹線転覆の目論見は、「ラディカル・リベラリズム」?

・市民主義者……鶴見、丸山

・吉本と黒田は、市民社会の成熟の延長上に革命を展望し、「市民主義者」を批判する

・グラムシ……有機的知識人論……市民社会は人間的普遍性を生産する場であるために、革命的な契機をはらんでいる。その普遍性は、商品生産と商品流通によって形成される。「個々の商品生産の場では個別的・具体的な有用労働としてあらわれるものが、流通場面(市場)では抽象的人間労働として「普遍化」される」→「市民」成立→普遍性に抗する、資本・階級・国家といった阻害要因を排除するための「市民的」=「倫理的」なヘゲモニー闘争が要請され、有機的知識人の必要性も導かれることになる→労働組合の賃上げ闘争、搾取に反対する闘争が作動していることが前提となる
⇒丸山真男ら、市民主義者


・ルカーチ……「予言者」的知識人論……物象化論(疎外論)……「市民社会における労働を、数量化=物象化され質的なものを疎外するようなありかたをしていると捉えた」「商品の交換可能性の担保であるところの労働の抽象性や交換価値は、むしろ、自己のものであるはずの生産物が他者に譲渡(疎外)されるための否定的な側面と見なされる」……市民社会は倫理的な装置を持たないと認識されるため、倫理的な「党」の存在が、より重要視されることになる……「時として発生するところの、数量化・物象化された世界に対する質的なものの反乱は、それ自体としては無意味でアナーキーな暴動と見なされる」……「党は市民社会から超越していなければならない」……スターリン批判以後、はじめて、ルカーチが主義が十全に発揮されるようになった
⇒黒田

・ヨーロッパにおける一九二〇年代のグラムシVSルカーチの構図は、一九六〇年代初頭に丸山VS黒田として現出した

・二極の中間に、「市民主義者」鶴見俊輔のアナーキーと、党ではなく「急進インテリゲンチャ運動」の先行性を主張した吉本隆明が存在する

・大衆と結びつこうとする吉本と、孤高に待機をなす黒田

・「労働運動という、もう一つの下位の政治文化では、吉本の影響力が皆無であり、黒田のみが力をふるったことは言うまでもない」

・「黒田寛一は初期にはしきりに「文化理論戦線」の再編成を叫びながら、その市民社会のジャーナリズムにおける代補を埴谷に託したのであろう」

・森茂の芸術論……「労働対象はすでに商品化され、貨幣(≒抽象的人間労働)によって数量化されているのだから「美」もまた疎外され、資本制においては、芸術は疎外された芸術とならざるをえない」「労働者が革命の主体であるのと同様、芸術家は革命の代理=表象(「宿命的に世界を背負う人」!)たりうるのである」「ここに、真と善のみではなく、美をも包摂する「党」が可能となる」「この「美」の論理が、『美学講義』のヘーゲルが散文芸術(小説)を哲学的革命の代理としたことのマルクス主義的変奏である」「ちなみに、現代文学の「終焉」問題は、文学が革命の代理=表象たりえなくなったところにある」

・アカデミズム、知識人界から疎外された黒田の、革命家、芸術家、知識人としてのあり方
⇔構造改革派知識人……「衣食足りて礼節を知った」

・ルカーチ、黒田→労働の抽象性は、質を捨象した数量化として斥ける……「労働が、抽象的でつまらない」

・「労働が抽象的人間労働としてあらわれる」「「市民社会」とは、資本制において場所的にも時間的にも特殊なものでしかないのではあるまいか。その意味で、構造改革論も疎外論も「市民社会」のイデオロギーだったのであり、「市民社会」という歴史的・局所的な場においてリアリティーを持ったものなのである」

・「格差社会」……同じ労働で賃金がまったく違う……労働価値説が失調をきたし、かわって価値形態論が有力となった

・「「ワーキング・プア」といった言葉に象徴されるように、労働の抽象性が崩壊していることが明らかであるため、改めて労働価値説の再建が企図されねばならない」
「抽象的人間労働」は「決して実現されないが、かといって払拭されることもない」

・「社会が「市民社会」として有機的に「普遍」へと方向づけられていないかぎり、アカデミズムや講壇知識人も意味=方向」「の失調にみまわれている」ため、講壇知識人の存在理由がなくなっている

・市民社会は縮減しつつも消滅しない

○チェック
ルカーチ
グラムシ
吉本隆明『思想と幻想』「擬制の終焉」
ジョルジュ・ソレル『暴力論』
川上源太郎『ソレルのドレフュス事件』
クリストフ・シャルル『「知識人」の誕生』
黒田寛一『日本の反スターリン主義運動』1
大月洋一(松田政男)『現代の発見』第八巻
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