小谷野敦「山室なつ子の生涯」 

小谷野敦山室なつ子の生涯
小谷野敦氏がWeb上で連載中の小説
樋口一葉が若死にせず、戦後まで生き延びたという設定
その世界では一葉にあたる人物は1960年に、マイナーな作家「山室なつ子」として生涯を終えた
この「山室なつ子」を1985年に、ある女子大学院生が研究テーマとして選ぶ、というのが物語の筋であるよう

フィクショナルな仕掛けが興味深い
また、「文学」と「女性」との関わりということが、大きなテーマとして浮かび上がりそうだ
たとえば次のようなところ


「「その内、千鶴がコンクールの授賞式に出た時の話になると、彼女は嫌な顔をして、「文学者って、けっこう軽薄なものだと思いました」と言った。授賞式に続くパーティーで、三十、四十代の男の作家や文藝評論家から話しかけられたが、「恋人はいるの?」とか、「今度は恋愛小説を書いてね」とか、なんだか嫌らしいことを言われて、早々に帰ってきたらしい。」


「田村先生も、いろいろ、そういう目にあったんですか」

 と訊くと、                         

 「そりゃああなた。大変よ。地方の私立大へ就職する話があった時なんかね、『ところで、理事長の夜のお相手は』って訊かれたのよ」

 この話には、四人とものけぞって、

 「ほ、本当ですか!」

 というようなことを皆で叫んだ。田村先生は、

 「ほ・ん・と」

 と、目に不快感をたぎらせながら言って、

 「理事会の強い私大なんて、何があるか、わかんないわよ。もう、撥ねのけたり、しょうがないから有力教授の抱擁くらいは我慢したりね」

 四人とも、絶句していた。


「あのね」

 と田村先生は言った。

 「女が職業を持とうと思ったら、たとえ大学の先生でも、それくらいの危険は、覚悟しなきゃだめよ。それが嫌なら、とっとと結婚して主婦になることね」

 大学院へ来た以上、みな大学教師になるつもりでいたから、将来を憂えて泣きそうな顔になった。」

大学の女性教員の、また、コンクール授賞式での、セクハラ問題が触れられている
しかし、この小説に登場する女性は、女性像として紋切り型な感じもする
また、女子院生を主人公とするため、語りには工夫が凝らされているが、次のようなところは気になった

「徳田秋聲は、なんだか地味な作家だというイメージがある。涼子は、文庫本で『あらくれ』を読んだことがあるが、何だか薄汚い世界だと思った記憶しかない。恵理子も、読んだのは二冊くらいで・・・と口を濁した。」

一つ目の「なんだか」はひらがなで、二つ目の「何だか」が漢字であるのは意味があるのだろうか
「なんだか」を多用する女性は確かにしばしば見かけるが、ぼくはそういう女性は好きではない

しかし、そうとうな緊張感を持って、意識的にWeb上で書かれた小説であるようで、続きが気になる
ブログに書かれた文章なのに、とても読みやすい

気骨あるフェミニストの女子院生は、ぜひこの小説をチェックして、なんやかや意見を提出してほしいものである
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