ハイデガー『形而上学入門』 

形而上学入門 形而上学入門
マルティン ハイデッガー (1994/09)
平凡社
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「2ちゃんねる」系のページのことである。
女子高生の書いたページにリンクを張って、話題にしていた。
女の子のピースをした顔写真。
黒を基調とした背景。
短い言葉、ほんの数文字で書かれた自己紹介。
大きく取られた余白に、殺とか狂とか薔薇とか、そんな文字が浮かぶ。
言葉のそこここで、病的なものを感じさせる。
それに対する2ちゃんねらーの意見。
「かわいい」とか「きもい」とか。
こういう路線が流行ってるよねとか。
そういうことを言うのは良くない。
妄想イクナイ!(・∀・)



ところで、「死」と言えばハイデガーである。
ハイデガーを指して、20世紀でもっとも影響力をもった哲学者とも言われる。
ぼくはハイデガーをよく知らず、もっとちゃんと知りたいなと思っていた。
ハイデガー『形而上学入門』を読んだ。
アリストテレスの『形而上学』『自然学』、プラトン、カント、ヘーゲルの存在論。
それらに対するまとめ直しと、「存在論」の再構築をこころみている。
比較的分かりやすい。
アリストテレスやカントほどにゴチゴチな形式的なものではない。
へーゲルのように晦渋でもない。
西田幾多郎のように禅問答的でもない。
『形而上学入門』は学生向けの講義がもととなっているということで、ある種のエッセイ風な語り口でありる。
日常的なレベルで哲学を語ろうとしていて、まあまあ読みやすい。
存在論について知りたい方にはおすすめできるかな。
変な解説書を読むより、ハイデガーの講義を直接読んだほうが楽しめるのじゃないか?
よほど腰を据えて、キーワードを調べつつ読まなきゃ、ちゃんと理解できないかもしれないけれども。
日本では「存在論」という言葉の知名度が低く、ピンと来ない人も多そう。
でも「存在論」をぼくは好きだ。
ぼくの生きている意味とは何なのか。
自分は本当に存在しているのか。
世界は本当に「ある」のか。
そんなことを根底的に考えていくからだ。
すっきりする。
本書は、なぜ、そもそも有るものがあって、むしろ無ではないのか、という問いから始まる。
なぜ、そもそも有るものがあって、むしろ無ではないのか。
この問いが、くどいほど繰り返される。
ハイデガーの存在論では、「無」というものが重要視されている。
なんで人は生きているのか。
なぜ死んでいるのではないのか。
「死」という言葉が登場するわけではない。
しかし、無や存在ということをぼくらが考えるとき、「死」のことを考えながら存在論に向き合うと、より親身に取り組める。
本書は1935年のドイツで行われた講義が元になっている。
ヒトラーが首相に就任した年だ。
第二次大戦へと向うドイツの、当時の社会の雰囲気はどのようであったのだろうか?
そのことを考えるにつけても、「死」の臭い感じないわけにはいかない。

……哲学をしても、《何も出てこない》。《哲学をしても何も始まらない》。この二つの決まり文句は、特に、学問研究者や教師のグループ間で流通しているものだが、それは反論できない正しさをもつ確認の表現である。(創文社、岩田靖夫訳、二〇〇〇年)


自嘲的な言葉である。
哲学なんて社会的な役には立たない。
でも、本当は重要なのだ。
社会に対して哲学の意義を訴えたいという、切実な気持ちも、あちらこちらに感じられる。
文系学問なんて、戦時下においては無益なものであろう。
武力、兵力、科学力、経済力がすべての戦争。
プラトンの『国家』みたいに、哲学者が政治を行うべきだというのは、可能なのか良いものなのか、よく分からないけれども。
哲学は政治とどのように交錯しうるのか。
哲学と詩はどのように接近してあるものなのか。
戦争と詩はどのように関与するものなのか。

リストカットにおける死の欲動。
戦争における死の欲動。
死をイメージさせる、短い詩的な現代日本の自己紹介。
ひたすらパワフルで腰の強い、ハイデガーのロゴス。
そんなイメージの対照がぼんやりと浮かんでは消える。
ハイデガーの哲学は思弁的な考察の中に、わずかに詩的な香りも入り混じる。
死の臭いは詩の臭い。
現在を生きるぼくらは、新しい詩を詠う事ができるのだろうか?

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はじめまして、ぱんだといいます。
ハイデッガーには大学のときに出会い、
本当に感動しました。
コチラのブログでも連載してますので、
よろしければご意見、感想など聞かせて
いただければ、たいへんありがたいです!
[ 2007/05/26 22:42 ] ぱんだ [ 編集 ]
なるほど。
興味深いブログをお書きになっていらっしゃいますね。
私のやり方とも近いように思います。
ちょくちょくうかがわせていただこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
[ 2007/05/28 16:23 ] 松平耕一 [ 編集 ]
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