美嘉『恋空』 

恋空〈上〉―切ナイ恋物語恋空〈上〉―切ナイ恋物語
(2006/10)
美嘉

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◎ライトノベルを読む層とケータイ小説を読む層の特徴を次のようにおおまかに分けてみた

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A ライトノベル

少年向け

アキバ系 萌え オタク

妄想の性欲

ウェブ、ブログ、2ちゃんねるを使う若い男性の層

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B ケータイ小説

少女向け スイーツ

リア充 リアルが充実したセックス

テレビは観るが、ウェブ情報は読まない若い女性の層
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・恋空は、ウェブ上で、異様に糾弾されている
2ちゃんねる、ブログ、アマゾン等、恋空をからかうレビューで炎上している

一つには、ライトノベルを読む層が、ケータイ小説を読む層を、叩く構図ともなっていよう
リア充に対する嫉妬も含まれていて、その点を差し引いて現象を観察する必要がありそうだ

恋空的な物語を身体的に実践してしまいうる層と、メタフィクションとしての漫画・アニメを楽しむ層とで、分かれていそうなのである

・「描写」が極度に切り詰められるのが、ライトノベルとケータイ小説の特徴だと、一義的には言えそうである
この二つの周縁的な「文学」においては、少なくとも、文芸誌がかつて求めてきた描写力は、ほとんど否定されている

◎恋空の特徴

○肉弾派

・主人公たちは、そうとう、プロレスラー的というか、身体を張ってみせる
・予想通りの失敗をしてくれる。レイプ、いじめ、堕胎、恋人をとったりとられたりなど、危機回避能力がないのかと疑われる

ありきたりの挫折が多過ぎて愚かしいが、本人はまったく気づいていず、自分の世界にはまっている

・スイーツというより、ヤンキー、ギャル、不良系にやや近い
・また、アキバ系のオタクは、「恋空」のようなベタベタしたタイプのコミュニケーション共同体を作らない。その点が対称的である

○一次的なコミュニケーション至上主義

・友達や恋人等への縛られ方がほとんど異常
・「会話」と「声」を重視している
・オタクのように、漫画、アニメ、ゲーム、ウェブ等を媒介としたコミュニケーションを志向するわけではない

・読書をしている雰囲気があまりない(少しはある)
基本的に、先行する「活字」を否定したところで成立している小説である

○「感動」

・ある狭い共同体内で生活するうちに、偶然蓄積してしまった、裏切り、嫉妬、悔恨、悲哀等を、まとめて昇華させることがモチーフ

・それらの孤独をいやす手段として、この「ケータイ小説」が書かれた(実際にどうかはわからないが、建前上)

・「活字」という媒体を利用し、死んでしまった恋人への告白、堕胎してしまった子供への告白がなされる

・共同体内部での人間関係で、精神的に破綻・絶望し、「神の視点」を導入せざるを得なくなり、語り手は活字に、はじめて飛びついた、といったところか

○「リアル」である

・実際には不条理な展開も多く含まれる

・言葉が極限にまで切り詰められている
語彙が少ない
普通の意味での社会的な話題がまるで登場しない。新聞・テレビのニュースにまるで興味を持たない
本、漫画の話題がまったく出ない

・狭い共同体内での、恋愛、友情、家族関係、語り手の心情のみが書かれる

・なぜ「リアル」に感じられるか?
ここには、極めて逆説的な効果がある
語り手はほとんど創作の勉強をしたことがないようにみえる
たとえ、破滅型の作家であっても、「本を読む」「修辞にこだわる」等の訓練がなされ、作家としてデビューしている
しかし、文学的な規律・訓練が一切なされず、この作品が誕生しているであろうことが、かつてありえなかったような「リアルさ」をもたらしている
表現行為において先行する小説がほとんど参照されないことが、リアルにみえるという皮肉を見いだせる

○世界文芸史的に特異かも?

近代文学は、本来、規律・訓練を受けた作家が書くものであった
しかし、出版社・編集者をいっさい通さず、少女たちの共同体の内部でこのような小説が発生してきたわけである
紙では、リスクが高すぎてこのような作品を表に出すことは不可能であったろうし、このような作品を公開しようと発想するものもいなかったであろう
しかし、Web空間の、無料であること、即時的であること、対他的に多数に向けて同時に公開しうること、といった特徴を活かすことで、はじめて可能になった「文学」であるといえよう

☆参考資料

○ウィキペディア

・「内容には悪性リンパ腫や妊娠に関する記述など、現実的に有り得ない描写が多くみられる。当初はノンフィクションを標榜し、トップページにも「実話」と明記されていたが、矛盾部分を指摘されて以降は「実話をもとに」に改められて、脚色ということになっている。」

「がんやレイプに関する記述は、多くのがん経験者や強姦事件の被害者から批判が寄せられている[要出典]。がんに関しては、抗がん剤などの描写があるにも関わらず、味覚障害や生殖機能の破壊といった一般的な副作用はおろか、発熱や嘔吐のような「抗がん剤による闘病の苦しみ」の描写が皆無である。レイプに関しては、犯人が車で逃走した時に、車のナンバーを紙に書いたり(実際にレイプにあった際にはそんなに冷静ではいられない)、レイプの被害に遭ってから立ち直るまでの期間が短い(謝ってもらうだけで良いなど、無意味に優しい)という指摘があり、主人公がレイプについて容認している部分などが批難されている[要出典](作中に、自分だったら同じ事をしたと書かれている点など)。」
・→「俗情との結託」が激しく、問題となっている

「また、TBSラジオ・ストリームで放送された「コラムの花道」という番組では「文学賞メッタ斬り!」などの著作を発表している豊崎由美がケータイ小説全般の『1年間ほどにおける少女の恋愛、性交、妊娠、中絶、不治の病』という詰め込み展開を「コンデンスライフ」と名付け、「この作品におけるガン知識の欠落」や「出版社の安易な書籍化」などに警鐘を鳴らしている。

実話とのふれこみだったが、2007年12月20日号「週刊文春」により井上香織の「さよならの向こう側」という小説にストーリーが酷似していおり、盗作ではないかとの疑惑が浮上した。」

・→豊崎由美、「週刊文春」による批判あり

○東浩紀の恋空レビュー「東浩紀の渦状言論: 『恋空』読みました2

・「僕的には、これはけっこうまじめに読むに値する小説なのではないかと思うわけです。少なくとも、これは泣きの条件反射で作られている物語ではない。それにしては過剰な構造があるのです。骨組だけがごろんと転がっているので、いわゆる文学が好きなひとはかえって読めないのでしょうが、その骨組そのものはけっこう複雑な構造をもっているのです。」

・興味深い
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