2007年文芸部門年間ベストセラーと、「ケータイ小説は『作家』を殺すか」 

文学界 2008年 01月号 [雑誌]文学界 2008年 01月号 [雑誌]
(2007/12/07)
不明

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◎2007年文芸部門年間ベストセラー(トーハン調べ)は以下のとおり

・1位

恋空〈上〉―切ナイ恋物語
恋空 切ナイ恋物語 (下) 美嘉 スターツ出版

・2位

赤い糸 上
赤い糸 (下) メイ ゴマブックス

・3位

君空―‘koizora’another story
美嘉 スターツ出版

・4位

一瞬の風になれ (1)
一瞬の風になれ (2)
一瞬の風になれ (3) 佐藤多佳子 講談社

・5位

もしもキミが。 凛 ゴマブックス

・6位

求めない 加島祥造 小学館

・7位

純愛 稲森遥香 スターツ出版

・8位

陰日向に咲く 劇団ひとり 幻冬舎

・9位

夜明けの街で 東野圭吾 角川書店

・10位

楽園(上)
楽園(下) 宮部みゆき 文藝春秋

ケータイ小説がベストセラー上位を独占した

1位『恋空』、2位『赤い糸』、3位『君空』、5位『もしもキミが。』、7位『純愛』のケータイ小説5作品がベスト10に入った

◎対談 中村航、鈴木謙介、草野亜紀夫「ケータイ小説は『作家』を殺すか」(「文學界」(2008年1月号))

・「文學界」(2008年1月号)に、「ケータイ小説は『作家』を殺すか」と題した鼎談が掲載された

・座談会参加者は、作家の中村航、社会学者の鈴木謙介氏、「魔法のiらんど」の草野亜紀夫

○内容紹介

・書き手、読者は二十代等の若い女性が圧倒的に多い

・東京以外の舞台が選ばれる。都心でないというていどの郊外で、地名は書いておらず、匿名性の高い傾向がある。そのことが、全国的なムーブメントとなることに寄与している

ケータイ小説はネット上で読めるが、しかし、書籍化したものが紙媒体でも売れる。愛読者が、「一冊自分の手元に置いておきたい」という感覚のよう

・女子中高生の圧倒的支持を集める

・ケータイで読む層と、それを書籍で買う層は重なるが、書店では三十代、四十代での購入も多い

ケータイ小説は、昔の雑誌、「ティーンズロード」「ポップティーン」の読者投稿コーナーと似ている。ヤンキー系の子たちのレイプされたとか、妊娠したとかいった「実話」が多く集められていた

・主人公の名前と作者の名前が同じであり、「実体験」であると主張がなされる

・自分はこういう体験をしました、という告白をしあう、作者と読者のコミュニケーションのなかで、連載が続けられていく

・コミュニケーションは文学か? ケータイ小説は私小説か? という問題性をはらむ

・最近は実体験ものではないケータイ小説も現れてきた

・ある種の物語の原型、ある種の大衆芸能的なものであり、近松門左衛門の世界に近いのではないか(中村)

・お話の形は、勧善懲悪、「偉大なるワンパターン」である。作家の執筆行為に他者の声が不断に介入してきていて、それらを集積する装置として、「ケータイ小説」の作者がいる。「作者」は「巫女」のような役目を果たしている。昔話やうわさ話などの民族説話に近いのではないか(鈴木)

◎松平の感想

・なんだかんだいっても、売れる文学を提出できたひとは尊敬せざるをえない

・人は、どんなとき、「文学」を創出するのか。どんな「文学」を読みたいと考えるのか。飾りのない、原型的な物語が、ケータイ小説において露出しているということがありそうである。物語とは、母を見失った赤ちゃんが、自己の陥ったトラブルをいやすため、言語を用いて母を代替させる手段である、ということに、その一つの形がある

・レイプ、恋愛、妊娠、流産、リストカット、いじめ、離婚の危機、恋人の死、友達の裏切り、大切な人との和解等。現実と地続きでありつつ、起こりうる出来事、起こったら困る事件の連続から、ケータイ小説はなる。極めて、青春小説らしい青春小説であるともいえる

・もともと、細かい描写をケータイで打つことは、そしてケータイで読むこともまた、苦痛なことである。人間は、通常生きていく上では、最低限の「言葉」しか必要としない。対他的なトラブルに巻き込まれること。対他的な傷がいやされるよう祈ること。その二つの「感動要素」のみを抽出して寄せ集め、物語が成り立っている、ということもあるだろう。一部のラノベが、「萌え要素」のみを集めたり、「闘争と勝利」の快感だけを追求して物語を作るがごとく、経済的な効率を重視することで、ジャンル小説が登場していくのと似ているのであろう

・ケータイ小説が続々とベストセラー入りをし、「ウェブでも読めるのに、わざわざ書籍版を購入しないだろう」という常識は、打ち破られた

・たしかに、『恋空』はウェブでも読めるが、首が疲れて根性がいる。ウェブで読めて当たり前、書籍でも購入できる、というのが、今後の「文章」の在り方になるだろう。読者と身近な位置にケータイ小説はある

・今世紀、「ケータイ小説」は、そして、「ケータイ批評」もまた、「作家」と「批評家」に廃業宣言をくだしていくかもしれない。編集者と出版社の仕事は、ウェブにアップされた文章を編集し、書籍化し、営業することがメインになっていくかもしれない。しかし、それでもなお、専門的な「文学者」や「知識人」を、もしも社会が必要とするのなら、それらは、どんな存在であらねばならないのか。「ケータイ小説」が見落としていて、かつ、人々にとって役立ちうることとは、どんなものだといえるのか

・たとえば、ケータイ小説がもしも実体験ベースなら、それは量産のきく物語とはならないだろう

・美嘉の『恋空』は「実話」であると銘打たれているが、嘘だという説も多くある

・しかし、作者の美嘉のブログもある
美嘉のブログ」を見ると、作中人物への倒錯した想いがつづられていて、ひょっとしたら本当なのかなと思わせられる

・死んだ恋人のことを永遠と気にする雰囲気は尋常ではなく、ちょっとこの人大丈夫? といった思いを、読む者に与えざるをえないところはある
村上春樹の小説に出てくる、ちょっと精神病がかった、ヤンデレの女性みたいである

・美嘉がルーズソックスをはいているという記述が作中にはあり、また、作品の終わりは2005年となっているが、そこらへんもやや謎であった

◎松平の美嘉『恋空』 に関するエントリはこちら
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