文芸誌とケータイ小説 

群像 2008年 03月号 [雑誌]群像 2008年 03月号 [雑誌]
(2008/02/07)
不明

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○今後の出版メディアはどんな方向へと向かっていくのか。「侃侃諤諤」(『群像』08年3月号)には次のような注目すべき意見が書かれていた

・「去年(松平注・2007年)は新聞小説が当たった」

・「昔、新潮社の「純文学書き下ろし特別作品」っていう立派な箱入りのシリーズがあったけど、ああいうパッケージがなくなって、新聞がその代わりになっているところもある」

・「新聞は、客が多い」

・「でも「新聞が危ない」「新聞の没落」とか言われるようになってる」

・「新聞小説とケータイ小説の時代ってのは、「終わりの始まり」と「始まりの終わり」の交錯点かも知れない」

・「新聞がなくなり、文芸時評がなくなると、文芸誌がなくなり、そうすると純文学が危ないって話にもなってくる」

・「連鎖倒産だ」

・「文芸時評は九〇年代半ばまで、毎月上下二回でやっていたことを思うと先細りだ」

○新聞の時評担当者には高額の給料が支払われる。知識人がお金を稼ごうと考えたとき、大学と並ぶ最後の牙城が新聞であるが、新聞と文芸誌の連鎖倒産、などといった事態が、近い未来、生じうるのだろうか?

◎「始まりの終わり」としての「ケータイ小説の時代」について。中西新太郎「自己責任世代の一途を映すケータイ小説」(『世界』07年12月号)に注目する

・中西が『世界』に寄せた「ケータイ小説」論では、以下のような指摘がなされている

ケータイ小説には「〈苦難を引き受けるわたし〉という構図」がある

・「「一途」をつきつめる心情優位の姿勢はケータイ小説の主人公たちに共通しており、世界を引き受ける健気と言うべき心理機制がそこから生まれる」

・「一番苦しいことは誰にも話さないのが常態となりつつある現代日本の少年少女にとって、こうした引き受けの心理機制はごく普通のことであろう」

・「責任を世界へと投げ返すことのできない心理状況には、今日の青少年がおかれるきわだった社会的孤立が反映されている」

・「言い換えるなら、自己責任イデオロギーが強力に浸透しているということだ」

・「決して社会に救済を求めない「健気」な心情を磨くことでしか運命の愛を発見できないケータイ小説の世界には、これと一見無縁に思える新自由主義思想の精髄が、生の実感として息づいている」

○人はどのような対象に「救済」を求めるのか? 前近代においては、村落共同体に「救済」が求められたかもしれない。数十年前には、「政治」に責任が求められたかもしれない。それらの機構が成立しない現在、若者は社会から孤立し、新自由主義的なシステムのなかに放り出されている。そのことが「ケータイ小説」を生みだす背景となっている。ケータイ小説の執筆もまた、救済を求めた内面の吐露の一種であるのだろう

・さらに、中西論文によれば、「ケータイ小説では、文科的・社会的上層のライフコースではなく、ノンエリート下層のライフコースが実質的な関心対象となっている」

・「八〇年代ラブラブの恋愛物語とはっきり異なるのは、ケータイ小説が格差社会の低層部を生き抜く恋愛物語であるという点だ」

○この点を、武田徹は08年1月25日発行の「週刊読書人」の特集「ケータイ小説はなぜ受けるのか」によせた記事でさらに次のように補足している

・「ケータイ小説の台頭とは、実はジャーナリズムの不在を埋めるものではなかったか」

・「下層の若者の生活圏はジャーナリズムの射程が及ばない世界だった」

・「若者たちの心の琴線に触れるようなルポは書かれなかった」

・「マスメディアが報じなかった若い下層生活の心情を切実に伝えてくれるものとしてケータイ小説は求められたのではなかったか」

○田中和生のいうように、「文学であろう」とする意志のないものは「文学」ではないのだろうか? 「ケータイ小説」が「ケータイ小説」であることを超え、見るべき文学的な結実や進化を示すといったことは、ないものなのだろうか
世界 2007年 12月号 [雑誌]世界 2007年 12月号 [雑誌]
(2007/11/08)
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