椹木野衣『シミュレーショニズム』 

シミュレーショニズム (ちくま学芸文庫)シミュレーショニズム (ちくま学芸文庫)
(2001/05)
椹木 野衣

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◎1991年に単行本版が刊行。2001年に増補版が出る

・「シミュレーション・アートとハウス・ミュージックを〈サンプリング・カットアップ・リミックス〉というキーワードで横断的に論じ、1990年代の文化を予見した」(ウィキペディアより)評論書

・「サンプリング・カットアップ・リミックス」の歴史を、現代美術史とポップカルチャーのなかに探り出す。「サンプリング・カットアップ・リミックス」には、「引用・コピー・パロディ」と類する問題性をはらむ

東浩紀『動物化するポストモダン』の参照先の一つ

・『西鶴という方法―略奪・切り裂き・増殖・滑稽』で浅沼璞は、「サンプリング・カットアップ・リミックス」は近世の連句においても多用されていることを指摘している

◎本書を読んでの感想

・たとえば、「ニコニコ動画」におけるマッド動画。たとえば、コミケにおける同人誌の即売会。たとえば、「2ちゃんねる」におけるアスキーアートや定型句。それらに代表されるように、「サンプリング・カットアップ・リミックス」といった手法は、現在、「2ちゃんねる」や「ニコニコ動画」において全面化されている

・ところでそもそも、唯一性というのは、どうやって生じてくるものなのか?

・極限的に言えば、まったく「引用」の含まれない文章はない

・たとえば、「こんにちは」という言葉は、もちろん、なんら独創的なものが含まれる単語ではない

・「こんにちは」と言われることに対し、「こんにちは」と返すことには、すでに「引用に類するもの」が生じている

・「ロジカルなもの」とは、「A=A」が成立することである。1+1=2。ここには独創的なものはなんら含まれない。数学性は「普遍」と「神」に供する

・「サンプリング・カットアップ・リミックス」には、なんらかのカノンにおける「A=A」といった同一性と関わる。カノンに含まれる「A=A」という同一性を略奪し、切り裂き、増殖させる。そうすることで、「A」にダッシュをつけ、「A´」へと変更する。これが2次創作である。

・カノンに手をくわえ、カノンのなかに自己を滑り越せるシミュレーションを行うこと。これがシミュレーショニズムである。シミュレーショニズムをもっとも形式的に実践したものがテレビゲームだ

・人は、テレビゲームのなかに唯一性を感じることがある。感じないこともある

○Web環境は、データの吸い出しと改竄を容易にする。マッド動画や同人誌において、オリジナルの作品を、視聴者が手を加え、2次創作をする

・オリジナルなき、シミュラークルが全面化していくのがポストモダン社会である、というのが『動物化するポストモダン』。作家主義の駆逐。キャラクターの増殖。(しかしここには、「東浩紀」という固有名は当然のごとく残存し、その理念を欺いている)

・人は「唯一性のなさ」に耐えられるのか?

・近代社会において。「唯一性」を「視線」が支える。「唯一性」を「神」が支える。同一的な「神」が「法」を制定する

・「サンプリング・カットアップ・リミックス」は近代的な手法ではない。近代性は、同一性を要請する。近代性は著作権を認める。「サンプリング・カットアップ・リミックス」は、不法な所業として駆逐される

・人が「アート」と呼ぶもの。それは、選挙用ポスターの政治家の額に書かれた「肉」という文字でしかないのだろうか?

・「ロジカルなもの」と「ロジカルでないもの」に分けるとする。ある人が「ロジカルでないもの」にこだわり文を綴るとする。一字一句独創的な構成をなして文の連なりをつくりだすクラシックな文芸が、「詩」であると、一義的にはいえる。唯一的な個を求める、創造的表現

・もっとも、「引用」がまったく含まれない「詩」もまた、存在しないことだろう。詩と、現代のサブカルを代表する「二次創作」の違いはどこにあるのか? 

・ひとつはもちろん、情報化によるコンピューターツールの普及があるだろう。コンピューターはA=Aを完膚なきまでに守る。二次創作をなすものは、ある情報のクラスタ、固まりを、そのまま盗用できる

・もうひとつは、「詩」には作者がいて、「現代二次創作」においては、作者がいない、ということがある

・しかし、それらも、程度の問題ではないのか?

・唯一性への憧れと、作家性への憧れ。そこから逃れることは、本当には不可能なのではないのか?

○チェック
ボードリヤール「シミュラークルとシミュレーション」(1981)
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突然のコメント、失礼いたします。
来る10月2日、椹木野衣さんを招いて対談を行います。
よろしければ、是非お越し下さい。

「戦争と芸術-美の恐怖と幻影4-」

http://warandart2009.wordpress.com

主催:京都造形芸術大学/ギャルリ・オーブ

会期:2009年9月28日~10月12日(祝) 10:30~18:30 無休

会場:京都造形芸術大学人間館1F ギャルリ・オーブ

入場料:無料

協力:東京都現代美術館/原美術館

企画:飯田高誉(京都造形芸術大学芸術学部准教授)

スタッフ:高橋洋介(京都造形芸術大学ASP学科) 御厨亮(ASP学科)

宮内由梨(ASP学科) 高嶋慈(京都大学) 吉富真知子(同志社大学)

出品作家:草間彌生 横尾忠則 杉本博司 AES+F マーティン・クリード

Mr. 名和晃平 ヤノベケンジ 戦闘機プロジェクト(佐藤愛、田上穂波、三松由布子)


オープニングレセプション|日時:9月28日(月)18:00~19:30

会場:ギャルリ・オーブ


ギャラリートーク|日時:10月3日(土) 10月4日(日)

10月10日(土) 10月11日(日)

14~15時、16~17時の2回開催。

会場:ギャルリ・オーブ


対談|「終わらない戦後」

椹木野衣(美術評論家/多摩美術大学美術学部准教授

飯田高誉(本展キュレーター/本学芸術学部准教授)

日時:10月2日(金)18:00~19:30

会場:ギャルリ・オーブ



アーティストトーク1|「核時代のサヴァイヴァル/リヴァイバル」

ヤノベケンジ(本展出展作家/本学情報デザイン学科教授)

モデレーター:飯田高誉(本展キュレーター/本学芸術学部准教授)

日時:10月9日(金)18:00~19:30

会場:ギャルリ・オーブ



アーティストトーク2|「スペクタクル社会の表皮」

名和晃平(本展出展作家/本学芸術学部准教授)

モデレーター:飯田高誉(本展キュレーター/本学芸術学部准教授)

          日時:10月8日(木)18:00~19:30

          会場:ギャルリ・オーブ


アーティストトーク3|「日常の中の戦争」

           戦闘機プロジェクト(佐藤愛、田上穂波、三松由布子)

           モデレーター:高橋洋介(本展スタッフ/本学ASP学科)

           日時:10月12日(祝)16:00~17:30

           会場:ギャルリ・オーブ


ギャルリ・オーブ http://aube.kyoto-art.ac.jp/index.html
[ 2009/10/01 06:14 ] 戦争と芸術展 [ 編集 ]
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