東浩紀×近藤淳也×鈴木健対談――人類の99パーセントは馬鹿である 

東浩紀のブログのエントリ、「近藤淳也氏宅訪問」で、東浩紀・近藤淳也・鈴木健の対談を公開(2006年02月27日)している。お酒を飲みながら、砕けた感じで雑談をpodcastしたものらしい

○木棚環樹さんがこれをブログで文字に起こしている

・近藤淳也が理想主義的な自由論を述べる。これに対して東浩紀がクールで淡泊なつっこみを入れている

東浩紀の国家観って、どうなっているの? というのは常々疑問ではあった。『動物化するポストモダン』では、単一のアーキテクチャと、その上に乗る多様なコミュニティが存在する。国家も、このコミュニティの一つにすぎない、という二層構造が語られていた。

・また、『思想地図』発刊記念シンポでは、それぞれのコミュニティのメンバーが、それぞれのコミュニティに属し、それぞれのコミュニティのなかで社会参加を行う。その社会参加の結果を政治へと反映されうるように、アーキテクチャを整理し、再分配と調整をなすべきだといった趣旨のことを東は述べていた。この弁論は評判が良かった。しかし、私には、具体性の点でイマイチ信頼にかけるもののように感じた

・批評空間派は「国家の悪」をながらく検討していた。日本において、良識的な文芸評論は、「国家の悪」をいろいろな形で分析した。東は、この点を回避しているのか、展開していくつもりはないのか。いまいち態度が分かりにくい。東における左翼運動への距離も含めて、この対談では、氏の国家観の一部がうかがえて、興味深い

◎内容

・一つ目の話題。「2ちゃんねる語」のような普遍性のない用語がWebには登場してきている。そのため、翻訳が難しく、国際性がなくなり、島宇宙化している現状がある

○「東:いやねぇ、あのねぇ。インターネットとかが出現することによって。様々な言語圏というのが一気にリンクし出現するわけですよね。で。例えば僕だったら、英語とかフランス語とかのブログが読める。読む可能性は出来た。かといって読むかというと読まないわけ。何故かっていうと、つまり、日本でもそうだけど「2ちゃんねる」を外国人が読めるかっていうと読めないわけじゃない。外国人の日本語研究者っていうのはさぁ、日本について、何か知ろうと思ったら、昔だったら朝日新聞とNHKを押さえておけば何とかなったわけね。けど、いまだったら2ちゃんねるを押さえとかなきゃいけない。でもそれは、障壁がめちゃめちゃ高いわけじゃない?

近藤淳也:確かに。「キターーー(・∀・)ーーー!!」とか。」

○「東:インターネットで何を起こしたかっていうと、一言でいうと方言とかすごい共同体同士の言い回しとかを表面に上げていくわけですよね。」

・この認識は重要である

○「東:かつてだったならば、そういうことは全部活字にならないと。活字になったり、放送に載るっていうのはかなり標準化された情報で、その標準化の過程ってのが、日本とかドイツとかフランスとかアメリカとかっていう各国民国家ごとに行われていた。それが流通するってのがやっていたわけですよ。だから、国際的に成れるわけね。全部、本当にそこら辺の言葉が全部表面に出てきて、それで流通するっていった場合、インターナショナルっていうか、グローバルであることの障害・ハードルはむしろ高くなる。しかもこれはやっぱりいま言っている事の性格上、自動翻訳によってとかはどうしてもカバーできないはずなんですよね。」

・これまで、「活字になるもの」は、国民国家の単位でのまとまった言語たる標準語によってなされていた。活版印刷機とテレビは標準語を作る。標準語の習熟と普及が国民国家を成立させる。しかし、情報化社会においては、国民国家の内部でも、「方言に類するもの」が分裂して、Web上に露出する

・私としては、現代社会における「ギャル文字」。新左翼運動における「左翼的な言い回し」なども、同位相のものとして考えてみたくはある

・もともと、若者の集団には、特有のスラングがうまれる。また、特定の職能集団には、その組織ならではの専門用語、ジャーゴンが不可避的に生じるものである

・第一に、ある集団と別の集団とでは、直面している状況が異なり、そこで細かく分節化すべき対象となる事象も異なる。これは、技能的、現実的、実際的な面での、言語の固有性の発露である

・第二に、特別なスラングを使用することで、共同体内部の結束を高める作用がある。「言葉」とは、「自己」と「他」を区別するために使われ、アイデンティティをうるための手段となる

・たとえば、「アイヌ語」をたやさぬようにするために、アイヌ語講座に通うという人がいる。また、万葉集を研究して、古語の意味を精査することを生涯の課題とする人がいる

・「キターーー(・∀・)ーーー!!」であるとかいった「2ちゃんねる語」は、意図的に標準語とは異なった語彙を、コピーアンドペーストをすることで、「自己」を獲得する手段ともなっていよう

・そして、それは、マルクスの思想や左翼用語に詳しく練達していることと、いかなる差異がありうるかということもまた、課題となろう

○「東:アラビアまで行かなくても、ハングルとか中国語でも良いですよ。つまり、例えば、日本語で嫌韓という言葉がありますけど、嫌韓というのは普通の辞書にも載ってないし、ATOKでも翻訳されませんですよね。アメリカ人が、コリアバッシングが日本のネットで起きていると思う、しかも日本語が多少読めるアメリカ人だったとしましょう。そいつが「嫌韓」でGoogleで検索するかっていうと、検索しないわけですよ。嫌韓て言葉知らないんだから。そういう問題が起きるんですよ。これがなかなかクリアできない。

近藤淳也:それを全部オープンにしたら良いんじゃないですか?

東:オープンにしたとしても、そのオープンな情報にどうやってアクセスするかっていうところの障壁は、なかなか崩れないだろうと。」

・オープンに情報が開かれていたとしても、それぞれの組織間での、固有的な言葉を共有しないがゆえの島宇宙化が維持されるであろうことが指摘されている

・柄谷行人が大塚英志との対談で述べていた。Webにおける言説のレベルはひどい、前近代よりなお悪い、と。しかし、この手の主張は、転倒しているのではないか。もともと社会は島宇宙的な共同体により形成されていたものであった。その島宇宙的な現状が、Webに、反映されるようになったというだけのことではないのか。「ケータイ小説」にしろ、Web発の「ライトノベル」に類するものにしろそうである

・Webは、かつては、活字にならなかった大衆の生活がWeb上の活字へと表象されるようになった。そうすることで、以前より、社会の深層が表層へと露出するようになってきたのではないか

◎内容

・二つ目の話題。東における、社会参加検討

○「近:国家への多重所属というのはないんですか?

○「東:国家への多重所属はヨーロッパにおいて実現していますよ。ポルトガルとフランスの二重国籍とか。」

○「鈴:それはだから、構成的社会契約と僕が言ってる奴だけどね。」

○「東:それが理想だというのは僕も分かる。僕もそれには同意します。ただ、人類の多くはそんな面倒臭いことに加担しないと思いますね。」

・「面倒臭いことに加担しない」、この認識も正しい。左翼の理想通りに、人類が動いていくわけはない

○「東:近藤さんにしてもそうだし、鈴木健さんにしてもそうだけど、すごい意欲が高い人なんですよね。人間ていうのはたいてい適当で、なんとなーく、ここで生まれたから、なんとなーく周りで友達を作って、なんとなーく死んで行くんですよね。どうのこうの言いながら僕はこれは人類の生物学的条件だと思うわけですよ。」

○「東:podcastとかで録られているから、あんまりこんなところで言いたくないのですが、人類は99%ぐらい救いがたく馬鹿なんですよ。」

○「東:その条件を認めない限り社会設計は出来ないわけですよね。意欲のある人間、それぞれの地理的条件も全て引き払って、家族関係とかからも完全に自由になることができる。自由になり方もいろいろあって、他の国に行ったとしても家族との関係を絶やさないということもあれば、別に完全に切り取るということもあるかもしれないけれども、いずれにしても、それは大変にエネルギーの要ることですよね。」

○「国民国家という19世紀に発明された概念が素晴らしかったのは、人類全体を救おうと思っていたからなんですよ。すごい貧しい奴も、すごい能力が低い人も、すごい能力が高くて富裕層の人も、全部一緒くたにして国民なんだって事を言ったわけですよね。それはフランス革命の「平等」って理念なんですよ。自由・平等・博愛ってあったでしょう?博愛と自由は誰でも達成できるわけ。むしろIT的な物は自由と博愛だけが突出していると言っても良い。平等ってのは何かって事ですよね。」

・「国民国家は人類全体を救おうと思っていた」という東の認識は正しいのだろうか? 国民国家というものの「平等」の対象は、国家内部を超えることがなく、国家と国家の「間」に被害者・被差別者が発生する

・これに対して、「人類全体を救おう」という理念を代表したものして、マルクス主義であったのであろう

○「東:最近でもそうだけど、自民党も民主党もあんまり政策変わらないわけでしょう?いろんな政策のオプションがあるのに、それを全部パッケージ化して、こいつを選ぶかあいつを選ぶか二者択一にするわけですよね?あんなのまったく原始的なシステムで、ああゆうの僕ちょっと嫌いなんですよね。」

○「東:政策ごとに選挙権を分割すべきだと思います。」

○「近:なるほど。全員で決めるみたいなのに近いですよね。」

○「東:ん、いや、一人一票である必要もないと思いますよ僕は。最初に生まれた段階で、政策ごとに割り振った選挙権パッケージみたいなのを与えて、それを選挙権同士で売り買いするみたいな。」

・東のこの意見はどういうことなのだろうか?

○「近:市場があるんですか。」

○「東:それは、いわゆる経済的な関与をそこに入れないべきなんですけど。」

○「近:権利は平等であるべきだみたいな。

東:僕はコンテンツ産業系の選挙権を持ってて、コンテンツ産業系選挙権は、北朝鮮系選挙権の0.3みたいな。そういうような市場を作るということですね。

東:市場ってシステムが素晴らしいのは、みんなが馬鹿でもなんとなく幸せになれるってのが、市場ってシステムの素晴らしさなの。

東:物を売り買いする人ってのは自分が儲かることしか考えてないわけだ。例えばさぁ、原発問題だけに関心がある人がいるとするでしょう。別にイルカ問題でも良いんだけど。原発問題にだけ関心がある人ってのは、原発にしか興味がないわけですよ。社会全体を見渡す必要がないわけ。でも、原発には妙に興味があるから、原発関係に票を集めようとするわけだよね。自分の他の政策関係に持っていた権利を全部売り払って、原発関係のことを集めるわけだ。で、彼は大変なる極小的な利害で動いているんだけど、でもそういう人がいっぱいいれば、原発関係に関してはそれなりに政策が良くなったりすると思うのね。」

・話が唐突で分かりにくい

・たとえば、ある人は障害者介護を重要だととらえ、福祉活動を行う。別の人は、下北沢再開発問題が、クリティカルに感じられるかもしれない。それぞれは、それぞれの倫理的運動を課題とする。それらの総体をとらえ、権利の配分を正当になすことは、どのようにしたら可能なのか?

○「鈴木:例えば自民党で言えば部会政治みたいなもんでしょう?

東:違うと思うけどねぇ。もっとマーケットに近いんだけど僕的には。みんなが馬鹿でもどうやって上手く回っていくシステムを考案するかってところがキモなんじゃないかと。
東:僕はアメリカ大統領選挙とかも本当はイラクの人とか参加出来るべきだと思うからね。でもそのためには、日本国民だから日本の選挙権を一票みたいな考え方を根本的にくつがえす必要があるんですよ。そういうようなことを考えた時にいきなり世界政府ってわけにも行かないので、選挙権一人一票という原則から考え直す必要があるであろう。政策ごとに選挙権を細かく分割できると。選挙権証本みたいなのをもらうわけですよ。毎年毎年。「お前の選挙権マネーは五千マネーだ」みたいな。」

・「アメリカ大統領選挙とかも本当はイラクの人とか参加出来るべきだと思うからね」というのは普通にすごいな

・知識人とか大学人には、「大衆は馬鹿である」と主張する人が多い。「大衆は馬鹿である」といった発言は、ぼくは好きではない

・しかし、「政治」と「経済」にまつわるシステムにおいて、もしももっと、「自由」「平等」「博愛」を、世界的に実現できるようなシステムを開発できるというのなら、その人を尊敬するけれども
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มาーーー(・∀・)ーーーแล้ว!!

 やっぱりこうだよな↑と(タイ文字化けませんように)

『電車男』をタイ語に翻訳している女性と話したことあるのですがこの部分は問題なくやっぱりこう訳すだろと。

 まあ翻訳する方は知恵絞ってなんとかされますし、2ちゃんねる用語くらいは問題ないかと。

 世界中にはたくさんの日本語読める優秀な翻訳者がいらっしゃることですし。
[ 2008/03/22 04:42 ] 白石昇 [ 編集 ]
としゃべったときの会話の難しさについて
http://d.hatena.ne.jp/kidana/20050530
[ 2008/03/24 21:43 ] 木棚環樹 [ 編集 ]
なるほど
けっこう翻訳できちゃうものなのですね
[ 2008/03/27 00:04 ] 松平 [ 編集 ]
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