著作権の非親告罪化と蓮實重彦『「赤」の誘惑』 

竹熊健太郎のブログの「【著作権】とんでもない法案が審議されている」と題された記事が発端となり、著作権の非親告罪化がなされるのではないかと噂になっているらしい。



親告罪とは、「被害者等による「告訴」がなければ公訴を提起することができない罪」だ。
強姦罪が親告罪の筆頭として有名である。
被害者が、ちょっとそれ、どうなのよ、と加害者に対して怒らなければ、著作権法違反は問題にされない。
著作権法違反は、厳密に考えれば世に溢れているわけで。
結果として、言ったもの勝ち、みたいなところがあるわけですね。
もしも違反を厳密になくすとする。
警察が、バンバン取り締まれるようになるとする。
「2ちゃんねる」なんかでよく行われているコピーアンドペーストであるとか、コミケで流通する二次創作は、全滅なんじゃないか。
そういう不安から騒ぎが生じると。
しかし、「ニセモノの良心」というブログが「著作権法の非親告罪化って話で釣られる人達」で述べる通り、「映画等の海賊版等で商業的規模に達しているもの」の取り締まりを目的としたものであるのが基本のよう。
もしもそうであるなら、常識人の感覚からはそれほど外れるものではなさそうではある。
しかし、P2Pへの取り締まりへの拡大とか、いろいろと裏を含んでいる可能性もあるのかな?

ところで今、ぼくは、蓮實重彦『「赤」の誘惑―フィクション論序説』を読んでいるところである。
そして、『「赤」の誘惑』の末尾に付された断り書きが、ちょっと気になった。

 表記について

 翻訳の存在する書物、論文の引用は、原則として翻訳書によるが、文脈の関係で必ずしも翻訳の通りではない。

 訳語の一定していないもの(ミメーシス、シニフィアンなど)は、文脈上、翻訳書ごとの異なる表記を統一した。



海外の学術書や小説の、翻訳本の文章を、「文脈の関係」の問題で、原著の言葉と照らし合わせた上で、少々いじらざるをえない。
外国語で書かれた文章に対し、正確にアプローチするための処理であることは、本文を読めばよく分かる。

一瞬ひっかかりを覚えたのは、著作権のうちの同一性保持権について考えたから。
「同一性保持権とは、著作物及びその題号につき意に反して変更、切除その他の改変を禁止することができる権利のことをいう(著作権法20条1項)」(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

著作物を、作者の断りなくして変更させてはいけない、という法律である。
蓮見の例ではもちろんこれには当たらないだろう。
原文と訳における細部の差異が、精密な論をたてるときに妨げになる。
これに対する対処であろう。
しかし、「原則として翻訳書によるが、文脈の関係で必ずしも翻訳の通りではない」という言葉の字面に、ぼくは何がしかの感銘を受けざるをえなかったのだ。
それは、『赤の誘惑』というこの書物が、「模倣」と「芸術」と「フィクション」の相互の関係性に言及した評論であることに由来している気がする。
「模倣」に「美」の源泉がある、というアリストテレスのミメーシス論を検討し、批判するのが『赤の誘惑』という書物であるよう。
「模倣」「パロディ」「Webにおけるコピーアンドペーストと二次創作」「美」「著作権と同一性保持権」。
これらのキーワードの重なる地点にある問題を、おいおいと、考えて行ってみたい。
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