ゼロアカ同人誌対決、その雑感 

2008年11月9日(日)
第七回文学フリマにて「東浩紀のゼロアカ道場」の、ゼロアカ道場生同人誌競作対決が行われた
私、松平も『新文学』編集員としてこの対決に参加させていただいた
売り上げ部数込みで道場生間の勝敗を決める、バトルロワイヤル的なイベントだ

さてはて
私は「道場破り」としてこの戦いに臨み、しかし、敗北した
それでも、うるものの極めて大きな一日だった
私としては、一日で30部売れればそれでもいい方かもしれないと考えていた
ところが、『新文学』が1日で457部の売り上げを記録したことにびっくりした

『新文学』制作に関わってただいた皆様、変なことを言ってすみません
これは、『新文学』を不当に落としめての発言ではないです
ぼくとしても全力で、いい雑誌を作ろうと取り組んだつもりです
その結果として、長い間、売れ続けうるものを作ったという自負はあります
ただし、文学フリマ一日にて、短期的に、爆発的な売れ行きをみせるとは思っていませんでした
そのくらい、今の文芸を取り巻く状況は厳しいのだという例示のために述べています
東さんすら、一日で30部程度かもと、初期の段階ではおっしゃっていた気がします

たとえば、法政大学日本文学科が総力を挙げて文芸同人誌を制作しても、文学フリマでは何部かしか売れていなかったりする
同人誌制作経験がある人なら、一日一桁の売り上げ部数でも普通だということを、よく知っている
文芸同人誌など売れないもの、批評雑誌など誰も読まないもの
それが、編集者、文芸関係者、大学関係者にとっての常識であった

ところが蓋を開けてみて驚愕した
ものすごいお客様の数
全8チーム中、5チームが500部を完売
一日だけで8チームの批評同人誌が3800部以上売れたのである
一誌平均で480部である
はっきりいって驚くべき数字だ
たとえば、哲学書や文学研究書などは500部しか刷らず、それを何年もかけて売るのが普通であったりする
端的に言えばマーケティングが成功していたのだろう
なぜこのようなことが起きたのか、その顛末は分析するに値する

もちろん、売り上げ文学論というのもさもしい話ではある
しかし、販売部数の比較という話題も、文学とは何か、批評とは何かを考える上で、極めて重要な問題をはらんでいる
文学的な想像力は、人々の生活と密着して存在しているものだからだ
知の形態や文学的な想像力が、今、どのような様態をとっているのか?
人々の心に届き、送り伝えられるものこそがいい文学だ
多くの人に、心の支えとして寄り添える言葉は、どのようにしたら可能なのか

東さんが文学フリマでの同人誌の競作を若い批評家志望者たちに行わせたことは、「批評」として、極めてクリティカルな行為であった
講談社の後ろ盾があったということは、このような「祭り」を生み出した一つの要因ではあった
そして、8チーム16人が競い合って宣伝に奔走し、口コミ的な努力を重ねたことが、多くの来場者を招くことに結果してもいただろう

ゼロアカ道場の宣伝工作として、一つには動画が利用された
たとえば、自然発生的な次のようなものなど



現在の若者風俗とマッチしていて、クレイジーで勢いがある
同人誌制作には、動画制作のプロフェッショナルも欠かせない時代となった
また、藤田直哉氏による東浩紀撮影動画にも、名場面があった



本気の東さんが見れる
東さんが文フリを対決の場に選び、大成功を収めたことは、文学史的な事件でありうる
大学と出版社を巡る不良債権の問題としてアプローチできるからだ
「ゼロアカ道場」の試みについての本格的な批評は、これから書かれねばならない

しかし、さしあたって、文学フリマ当日に『新文学』をお買い上げいただいた皆様
差し入れをいただいた古澤克大様、inflorescencia様、その他多くの皆様
『新文学』に寄稿していただいた皆様、インタビューさせていただいた皆様
相方のしろうと様
本当にありがとうございました

「新文学」と「ライトテロル」を巡る戦いは、始まったばかりである
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