千田利史『デジタルで変わること、変わらないこと』と、Web文芸の可能性 

デジタルで変わること、変わらないこと デジタルで変わること、変わらないこと
千田 利史 (2004/04)
中央経済社
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メディア論を扱いつつ実践的な一冊。


テレビの地上波放送は、「カバレッジ100%の唯一のメディア」であり、メディアとしての世界普及は100%である。
それゆえ、「リーチメディア」、広告や情報等が、「たくさんの人に効率よく到達できるメディア」であることは、たとえインターネットの進歩があったとしても、変化せず、その力は依然として大きなものであり続けるだろう。
インターネットはテレビの牙城に、どの程度食い込んでいくものなのか。

本書は放送と通信の、テレビとインターネットの融合と棲み分けの方策を様々に模索する。
いかにすれば、それぞれは利を得ることができ、かつ、効率の良いサービスの提供が可能となるのか。
放送と通信の合体において、実践できそうなアイディアがあれこれ盛り込まれている。

私にとって興味を覚えたのは、次のような点であった。
本書の記述を自分なりの言葉に換えつつ、まとめてみる。

テレビは、普及率100%であり、広告効果も高く、不変の力を持つ。
しかし、実は特殊なメディアである。
テレビはリアルタイムで行なわれる速報性を利点とする。
一方で、テレビは見ている人を、テレビの放映されている時間、テレビのある場所に拘束する。
つまり、視聴者は時間と空間をテレビに縛られることになる。
時間と空間における自由度のないことに、テレビの一つの特徴がある。

他方、新聞や雑誌は紙で出来ていて軽く、持ち運びがしやすい。
また、朝買った朝刊を、帰りの電車でも読むことができる。
新聞・雑誌は、好きなときに読むことができる。
この点で、新聞や雑誌は「モバイル(可動性)」と「タイムシフト(時間をずらしても利用でき、接触時間の自由度が高いこと)」の二つの性質を持つメディアであった。
携帯電話等のモバイル機器は、これらに準ずるものとなりうる。

しかし、携帯端末は、テレビドラマやドキュメンタリーなど、時間をかけて作られた重みのあるコンテンツの視聴には向かない。
どちらかというと、スポーツ中継、ニュース、クイズ番組などの、リアルタイム性の高いコンテンツジャンルに需要がある。

そして、「インタラクティブ」な性質、双方向性も、デジタルメディアの重要な特徴である。
テレビで野球の試合を行なっている途中に、どちらが勝つか、視聴者の勝敗予想を携帯端末で集める。
視聴者参加型のゲームである。
商品も用意し、多くの人を巻き込む。
その過程で、消費者情報を手に入れる。

翻って考えてみる。
「2ちゃんねる」で、テレビの内容を実況しつつ感想を述べあうスレッドなどがある。
あるテレビをやっている時間、その映像や内容を、他人と共有し、見ず知らずの仲間と盛り上がる。
テレビとネット、二つが互いの特徴を生かしあい、効果を上げている一例であろう。

たとえば、文芸において、デジタルメディアとの親和性はどうなるのだろうか。
原稿用紙数枚の短編作品を読み比べるとする。
その場合、紙媒体でも、PCでも携帯でも、読みやすさはあまり変わらないかもしれない。
むしろ、一般の紙媒体より、短編の作品なら、携帯端末の方読みやすい、ということはないだろうか。

たとえば、mixiなどにおける日記の執筆と閲覧など。
日記の交換は、リアルタイムで他人とつながれることもあり、モバイルでのSNS利用において効果を挙げている。
これが、もしも紙媒体における文章の交換閲覧で同じことをやるとしたら、どれだけ大きな手間となることか。
子供のころ、交換日記なんてものをやった。
紙で交換日記を行なう場合は、片方が日記を持っている間は、片方がその日記を持てない。
当然のことだ。

しかし、SNSによる交換日記は、紙媒体における様々な不可能を可能にした。
数枚の文書を即時的に多数の人間と交換できることなど、Web登場以前には考えられなかった。

SNSにおける文書の執筆は、PCでやるのが速い。
一方、日記の閲覧は、モバイルで見るのでも、十分利用しやすい。

また、ケータイ小説も隆盛している。
長編小説でも、携帯端末での閲覧は可能かもしれない。
もちろん、長い文章を携帯の画面で読むのには、文体を工夫する必要はあるだろう。
ページを細かく分けたりなどだ。
また、軽めの評論やコラムなら携帯端末でもいけそうだ。

しかし、学術論文と携帯電話の相性は、さすがに悪かろう。
また、じっくり読ませる文学作品は、もちろん紙媒体こそが優れていよう。
しかし、マニアックな文芸作品も、お金がかからずに、品切れ・絶版の可能性ゼロで保管できるのは、デジタルの最大の強みであろう。

また、インタラクティブ性を文芸の領域で利用し、遊ぶことは出来ないか。
たとえば、二つの小説、二つの評論を用意する。
どちらが優れていると認められるか。
読者達に問いかけ、リアルタイムで感想を集計し、勝者に商品を与える。
そんな企画を組むのも面白いかもしれない。
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