寺田博編『時代を創った編集者101』 


寺田博編『時代を創った編集者101』(2003、新書館)

「文藝」「海燕」の編集長を歴任した寺田博による、名編集者101人の紹介。
明治・大正・昭和の時代を創った編集者たちの熱い息吹が感じられる一冊。
246ページの単行本で、「ハンドブック・シリーズ」の一つと銘打たれているが、内容の濃さは半端ではない。


日本文学史について勉強すると、純文学の作家の名前ばかりが目立つ。
しかし本当に、脚光を浴びるのは彼らだけでいいのだろうか。
作家というもの、作品というものを生み出している、背後のシステムこそに、注目すべきカラクリがあるのではないか?
作品を作り出すのはたしかに作家である。
しかし、作家を作り出すのは、「編集者」であるのかもしれない。
本書を読むと、出版の歴史、日本文学の歴史とは、「編集者」の歴史でもあるのだと瞠目させられる。
今を生きる私達が自明に思える多くの雑誌も、歴史の過程で多くの天才達に発明されてきた。
様々な編集者たちの涙と苦労が偲ばれる。
それにしても、惜しまれながら消えていった雑誌がいかに多いことか。
出版社や単行本、雑誌の生まれ消えゆくサイクルは速い。
そして、この『時代を創った編集者101』は、80年代前半までの編集者紹介で途切れてしまっている。
巻頭に添えられた寺田博と三浦雅士の対談で、三浦は次のように悲嘆する。

「三浦 八〇年代の前半まで、つまりゴルバチョフが登場するまでは、政府の権力も、アカデミズムの権力も存在していたと思います。アカデミズムは基本的には反権力だったと思いますが、それもまたひとつの権威として存在していた。それが八〇年代半ばくらいでなくなった。その段階で戦後文学が歴史の彼方に消えて、枠組としては機能しなくなってしまった。」
「以後は新しいものは出ていないんです。枠組み自体が壊れてしまったから、新しいも古いもなくなってしまった。それ以前までは編集者魂というものはありえたんです。なぜかというと地図が描けたから。どのあたりに立ってバランスをとるか神経を使うんですが、そこがまた醍醐味でもあった。だけど地図がなくなったあとはどうしたらいいかわからない。いまや売れ行きだけが地図でしょう。(笑)」

編集者魂は消滅した。
ただ売れ行きだけのために、今の出版界は存在する。
これが本当に、今の出版界の状況を正しく言い当てた意見なのかは、私には分からない。
しかし、次の指摘は、首肯できる。

「三浦 ……でも、よくいわれることですが、インターネットには編集者がいないわけですよ。したがって情報の価値も意味も何もかもただ玉石混交で並んでいる。ホームページには編集者がいるわけですが、インターネットには良くも悪くも編集者はいない。いずれ登場しなくてはならないだろうともいわれています。
寺田 ひょっとして利用者全員が編集者なのかもしれませんね。
三浦 ああ、それは面白い発想ですね。あるいは全員が著者であるとか。ただ、いずれにしてもインターネットを利用するためにも何らかの秩序が必要であるとした場合、それはインターネットではなく、結局はまた活字媒体になるんじゃないかという気がします。」

もしも出版業界やアカデミズムの世界が危機に陥っているとしたら、それらを解決するヒントはインターネットにあるのではないか。
・ネットにおける玉石混交の情報に対する編集者が必要。
・利用者全員が編集者になり、著者となる。
・インターネットと活字媒体の、新しい形での接続。
これらの作業を愚直に実践すること。
そのとき、私たちの陥った閉域には、新たな光が与えられるのではないか。
私はそう信ずるのだ。
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資本主義と社会主義の対立が
ゴルバチョフ以降なくなって
自由主義経済(儲け至上主義)だけが残った。その辺の話が面白いと思いました。
URLに私なりの雑誌編集雑感を書いたのでもし良ければ読んで見て下さい。
[ 2007/06/14 19:01 ] 木棚環樹 [ 編集 ]
雑誌はマスコミの四媒体のなかで、最初になくなりそうですね。
[ 2007/06/18 09:00 ] 松平耕一 [ 編集 ]
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