村上龍『テニスボーイの憂鬱』 

テニスボーイの憂鬱〈上〉 (集英社文庫) テニスボーイの憂鬱〈上〉 (集英社文庫)
村上 龍 (1987/10)
集英社
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テニスボーイの憂鬱〈下〉 / 村上 龍
主人公は30歳ほどの妻子持ち。
働き盛りで小金持ちの男が、モデルの子と浮気をする。
その子に振られると、今度は処女の女の子と浮気をする。
道ならぬ恋をいかに楽しむか。
渡辺淳一風な主題の小説。
 


スポーツだ。
グルメだ。
セックスだ。
村上龍の小説はもともと肉感的な描写の多い作家だが、身体的な欲求が前面に出ている。
聴覚触覚味覚等、五感をフルに利用していて、画面が華やか。
読んでいると、ご飯が食べたくなる。
セックスがしたくなる。
なんでこんなに健康なのでしょう、龍は。

人物の内面に頓着せず、ノッペラボーなものが多い、龍の小説。
その点で本書はちょっと違う。
珍しく、主人公の心理の屈折やら、女の子の悩む気持ち、駆け引きなどが描かれている。
恋愛小説的。
しかし、龍独自の才能で、情念や怨恨のドロドロした感じを短い言葉でズバッと切り取って描くのがうまい。

別れた女の子に、ふと主人公が電話したとき。
女の子が悲嘆し、言う。
公衆電話のボタンが、ライターで炙られて、溶けていたのを見かけた。
想像してしまう。
痴情のもつれにある男が、女との電話ののち、苛立ってボタンを燃やしたのじゃないか。
それをやったの、ひょっとしたら、あなたなのじゃないの?
ざくり。
主人公に恨み言をいう場面の鋭さ。
不純な情事が後に残す、薄気味悪い空気が、よく醸しだされている。

しかし、『テニスボーイの憂鬱』というタイトルにあるような、「憂鬱」の文字は、本書とフィットしているのか。
「テニスボーイ」というプチブル階層が、人生を謳歌しているなかで出会う憂鬱。
覇道を歩む、大人の男。
その顔立ちのくどさが、やや劇画的。
めげない、くじけない、ハッピーエンドに終わる。
奥さんの苦しみとか、大丈夫?
主人公は、マイペースだよね。
ちょっと心配にはなる。
まあ、お金があれば、たいていのことはできるのだな。

オタクが、二次元の世界を愛するのを「動物的」だと評することがある。
それも、一定範囲で分かる。
二次元への愛とは「他人の欲望を欲望する」、そういう理性から、ズレた行為だ。
ただ、二次元への愛というのには、それなりに、ひねった美意識が、多分に含まれていそう。
絵画を愛するというのは、何らかの、トリッキーな思弁が媒介として必要なのじゃないか。
やはり、ニジコンというのは、スノビズムである気がする。

それと比較すれば、村上龍の方が、ずっと動物的。
別に、いいとか悪いとかじゃなくても。
あんまり、「死」について考えなさそうなのだ。
生の無意味さといった実感は、表に出てこない。
欝的なものは皆無。
三日のうち三日は仕事していそう。
ポジティブで精力的。
不屈の信念が羨ましくなる。
連載期間は82年から84年。
時代性もいくらかあるのか。 
 
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ソフトテニス用のラケット情報は少ないですよね
[2007/07/10 23:23] ソフトテニス ラケット
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